シタら終わるし、シタから取り戻す

KUMANOMORI(くまのもり)

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裏表の世界観

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 セイが指を指すドアの上部のモニターに表示されているゲーム名を見れば、【S男だらけの不倫地獄、夫以外といっちゃダメですか?】だ。
 言葉を失う。個人的には「ない」タイトルだ。

 一方、セイのドアの上部には、【М女だらけの不倫天国、妻以外からのいきまくり宣言】と書かれている。
 私が「ないわぁー」と言ったのとほぼ同時に、「タイトルセンスが、な」とセイも言うのだ。

 確かに見事に対比したタイトルではあるけれど、それだけじゃ、分からない。

「結婚している設定で、妊活強要してくる妻から逃げる感じで……。不倫中らしい」
 とセイが設定を告げてくる。

「妻も不倫中みたいで、しかも夫はモラハラ気味……?」
 と続けてみたら、セイは眉根を寄せる。

「それはさ、妻側が無理矢理のしかかってくるから、だろ」
「夫側は無理やり脱がそうとして、きたけど」

 世界観は共有しているのかもしれないけれど、主人公にとって都合のいい描かれ方をしているようだ。
 互いに見つめ合ってやや微妙な感覚になりながら、

「夫役の人顔がセイに似てた」
 と言ったら、
「妻役はリセ似」
 と返ってきた。

 さらに見つめ合って微妙な間があった後で、チェックしなければ、と手元のモバイルを操作する。
 いやみな演技は申し分ない、夫役。

 あれ以上に際どいシーンがあったとして、どう切り抜ければいいだろう?まさに、結婚を目指して私は処女を守ろうとしていて、セイは女性経験をロンダリングするための救済措置の最中だ。

 婚姻関係がうまくいかない夫婦の裏表のゲームだとすれば……結婚を目指す私たちにとっては、精神的にも肉体的にも大きな試練になる。

「大丈夫だって、オレは慣れてるし」
 とセイは言うけれど……私は、夫役の人を見ていたら……未来のセイを想像させる気がして少し怖くなっていたのだ。

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