上 下
17 / 17
夫役との出会い

3

しおりを挟む
 ピンポーンとインターホンの音がして、バッと男が手を離す。なんだよ、と言って顎でしゃくり、私に出ろと促してきた。
 インターホンに映りこんでいるのは、宅配業者の制服を着た男性だ。はい、と答えて、エントランスの解錠ボタンを押す。

「なんだよ、何頼んだわけ」
 吐き捨てるように言う男性は、ソファに背を預けてスマートフォンを触り始める。
 少し経って、今度は玄関でチャイム音がして、私はドアを開けた。

「ライオン急便です、澤井様からのお届け物です~!」
 と爽やかに伝えてくれる男性は、小さな段ボールを手渡す際に、
「早く別れなよ、そしたら付き合おう?」
 と言ってくる。

「え?」
 と問い直すときには、ありがどうございましたぁ~!と軽やかに去っていった。
 リビングにも取っていくと、セイに似た男性が、ビクッと身体を震わせるので、なに?と私は尋ねる。

「なんでもねぇよ」
 と言うけれど、明らかに挙動がおかしくて、
「ちょっと出てくるわ」
 と返してきた。

 男の人と付き合った経験のない私でも、ピンとくる。
 怪しい……。これはきっと……浮気?

 そんな風に思っていたら、スマートフォンが通知を知らせてきたので、確認した。
「今から行ってもいい?」
 と誰だか知らない相手から連絡が来るので、困ってしまう。アカウント名を見れば、トアとかかれている。名前からすれば男性だと思うけれど……。

「ライくんどうせ、浮気に夢中で帰ってこないじゃん?こっちもさ、もっと遊んでもいいと思うんだ」
 あ、あれれ……。こっちも、もっと遊んでもいい?

 ライくんというのは、きっと夫の名前なのだと思う。
 ダブル不倫の気配だ。

 その後二三時間ほどで帰宅してきた夫たる彼からは、バニラのような香りがした。飯はいらないわ、と言う彼はやっぱりセイに似ていて、胸が痛くなる。

 隣で眠りにつき、翌朝目覚めた。家から出ることなく、今回の仕事は終わった。ブザー音が響き、退勤の時間を知らせてくれる。

 ドアが開いて、セントラルホールに戻った。

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】好きな人に身代わりとして抱かれています

黄昏睡
恋愛
彼が、別の誰かを想いながら私を抱いていることには気づいていた。 けれど私は、それでも構わなかった…。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

ご褒美

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
彼にいじわるして。 いつも口から出る言葉を待つ。 「お仕置きだね」 毎回、されるお仕置きにわくわくして。 悪戯をするのだけれど、今日は……。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

秘密 〜官能短編集〜

槙璃人
恋愛
不定期に更新していく官能小説です。 まだまだ下手なので優しい目で見てくれればうれしいです。 小さなことでもいいので感想くれたら喜びます。 こここうしたらいいんじゃない?などもお願いします。

君の浮気にはエロいお仕置きで済ませてあげるよ

サドラ
恋愛
浮気された主人公。主人公の彼女は学校の先輩と浮気したのだ。許せない主人公は、彼女にお仕置きすることを思いつく。

処理中です...