シタら終わるし、シタから取り戻す

新しい仕事

2

　精査に出発するためのセントラルホールには、チタン製のドアが並んでいて私達はそこから、それぞれの査定場所に行く。

　私は今ドアの前に立つ。アダルトゲームの査定に入るのは初めてだったので、事前説明があった。ゲームキャラとの性接触では受胎しない。けれど、性接触は男性経験、女性経験にカウントされるらしい。

　女性経験、男性経験には一応定義があるらしい。性器や性器に準ずる部分の使用を定義にあげていて、キスはカウントされないようだ。

　結婚相手の条件に関する事項は、男性経験や女性経験だけじゃなく、家族構成や学歴、渡航経験、国籍などにも及んでいることがあるらしい。離婚歴ありが条件になっている場合、あえて結婚して離婚する人もいるらしいのだ。セイは色んな条件や救済措置について調べていたらしい。

　ランダムに割り振ったために、一部おかしな条件が提示されている、ともっぱら野党からの批判の対象になっている。けれど、政治家達が身内に「身を切らせて」実験させている施策のため、単に無責任だと糾弾するのは難しいらしい。

　セイが救済措置のためにアダルト部門に行ったのも、機会をあえて作り、逃げ切るためだったのだという。
　受胎させることはないけれど、ゲーム内での経験は、結婚条件に関しての男性経験、女性経験には数えられてしまうらしい。

　私達はゲーム内に入る際に、自分をデジタル化して仕事を開始する。デジタルとデジタルの交流は、経験に数えると言う考え方だ。フィジカルとデジタルの交流は経験に数えないらしい。

　ドアの前に立った私には、想像以上の緊張感があった。やけになるな、と言ったセイの言葉は正しい。やけになっていたのだ。

　もし、守り切れば、セイと結婚できるのかな？
　セイが私のことを好きだなんて、嘘みたいな話だ。
　どこがいいのか、分からない。

　ただの愛着のような気もするのだ。昔から一緒の相手が、結婚してしまったら、遠くなってしまうから、ぬいぐるみのようにそばに置いていたいって言うような。