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覚悟の表明
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しおりを挟む家に来たセイはファイルに入れた書類を持ってきていた。会社から持ってきたというけれど、あえて紙ベースの書類ともってくるなんて、なんか物々しい、と思う。
けれど、頼んだデリバリーがやって来たので、突っ込みを入れる隙を失った。セイの頼んだカレーとチキンカツ、私の頼んだサラダパスタとヨーグルトを運び入れ、キッチンで飲み物を用意する。
たまにうちに遊びに来るセイは、私の部屋の変化にうるさい。新しい家電や雑貨が増えていると、どこで買った、と聞いてくる。今日もまたディフューザーの匂いが変わっていると言って、詰めてくる。
私がテーブルに飲み物を持って行くと、
「なんでディフューザー変えたの。何か香り濃くねぇ?」
とセイは言ってきた。
「イランイランとかジャスミンってさ、色気がアップする香りって聞いたから」
と私は隠すことなく言った。イロケ、と平板なトーンで言うセイはやっぱり、ヘラヘラ笑って、
「言葉の意味知ってて使ってる?」
とバカにしてくるのだ。
私はパスタのふたを外して、いただきます、と声を出して、セイのいつもの話の流れを遮る。そして、一番告げたかったことをまず告げた。
「アダルト部門に異動することにしたから、景気づけって感じ」
私からの話はそれだけだ。
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