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失われる瞬間ばかり見る

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 虹尾は私と千景が生まれ育った土地だ。挑文師の世界では、魂の穢れを流す場所を言われている。ただ、虹尾というのは一般的な名称ではない。

 私たちの住んでいた場所は、古くは交通の要所であった場所だ。時代が下るにつれて撃ち棄てられるようになっていったようだ。今ではお宮に向かう巡礼路や観光名とは少し離れているため、人気もない。少し街道を外れれば、原生林が生い茂る樹海が広がっている。

 私と千景は、出自について詳しくはないけれど、両親のどちらかがその地域では、名家の生まれのようだった。周囲の大人たちは、私たち姉弟に特別な眼差しを向けていたけれど、双子であることが足を引っ張っていたようだ。親戚に生まれた子どもが正当な跡取りになったことで、私たちの存在は意味を失くしたらしい。

 私たちは、排除されるべき存在だったのかもしれないけれど、想像以上にしぶとかった。だからこそ、こうして生きのびているのだ。

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