挑文師、業務結婚します

きゅるるん妖魔の誘惑

4

「鳥男と当麻さんに何かされていませんか？逃げていく姿が見えました」と言われて、
「話をしていただけですよ」と私は答える。

「当麻さんが話だけでおさめるとは、思えませんが」と言うのだった。

「不貞はしません」と私が告げたら、
「清々しいですね。不貞しかしていなかった身からすれば。眩しいです」
　と言われてしまう。
「と、融さん。まさか」

　自分が既婚者になっても、相手は既婚者がいいとか？私では満足できない、とか？と考えていたら、
「ありません」
　と一言。
「まだ、何も言っていませんよ」

「きっと誤解をしていますよね。美景さんは顔に出ます」
「そ、そうでしょうか」
「美景さんと結婚していて不貞をする理由がありませんよ。俺が本気で心を傾けたときに、美景さんの重荷になってしまわないか。それだけが気になります」
「重荷になんて、なりません」

「どうかな？」
　と悪戯に笑って、融はお先にシャワーに行ってきます、と言うのだ。
　言葉の裏を読んでしまうといけないな、と思う。

　お先に、シャワーを――――？
　私は頭を振って、考えを振り払う。
　なし崩しに、ずるずるとはいかない。丁寧に重ねていきたい。

「今日は、飲みませんか？」
　と融に言われて一杯だけ、ワインを飲みかわした。