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業務結婚は営業成績のため

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「早く子どもを成せばいい。そうすれば、更に評価が高まる」
「こ、子どもですか?」
「高まるのはハヤテ先生の評価ですね。無責任に子どもを作れませんよ」と融はさらりと流してしまう。
 どこか大人の会話だと感じてしてしまう。私は子どもを作ろうだなんて、思ったことはなかった。
 融はあるのだろうか?

 うかがうように融を見つめてしまったら、
「既婚者のお付き合いだと。お相手に、子どもがいるかいないかで、付き合い方が全く異なりますね」
 と端的にコメントをする。融の意思が気になったのだけれど、あくまでも相手のことをコメントするあたりが、融らしい。

「ちゃちゃっと作ればいい」
「簡単に言わないでください!そんな、簡単にはいきません」
 と言って融と顔を見合わせてしまう。この結婚における、子作りの意味とは?
 そもそも、そういった接触をする関係ではないのに。

「簡単では、ありませんよね?」
 と融に水を向けたら、
「いいえ、簡単ですよ。欲しいですか?」と何のことはなく言う。
「え。簡単なんですか?」
「はい、美景さんの合意があれば。何人でも、養います。作ります?」
 何人でも?

「い、いえ。今はいいです」
 そもそも融にとって私は、そういう対象として見れるの?と聞きたかったのだけれど。求めた答えよりも大分上をいかれてしまったように思う。

「では、やめておきましょう」
 と融は言って会話が終わる。

「円満そうじゃないか。では帰る」
 ハヤテ先生は変化を行って、ハヤブサの姿をとった。そして、
「じゃあまたな」と言って窓から去って行く。

 ハヤテ先生は忙しく騒がしい。一体何だったの?と惚けてしまうそうだったけれど。分かったことがある。
 この結婚はハヤテ先生の采配による、強制お見合い結婚だったということだ。
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