71 / 228
魑魅魍魎、ぞろぞろと
5
しおりを挟む
しばし、幸福な光景を眺めていたところ、
「お前たち、動物品評会をしてどうする。そんなことより、惚けた女、お前、落日(らくじつ)に会っただろう?」ととらつぐみがおもむろに口にした。
「落日?」
「紅い女だよ。黒く長い爪を持つ恐ろしい女だ」
と端的に言うけれど、それだけで意味が通じた。たしかに彼女は紅かった。
「恐らく、会っていると思うけど。彼女は一体?」
「落日は禁書の管理者だ。寧月灯と俺と共に禁書を管理していた」
そう口にしたとたん、レッサーパンダもとい、融からツウっと冷気が立ちのぼって来た。かと思えば、融は変化を解き元の姿に戻る。
その名前を覚悟もなく、気軽に口にしてはいけない、と私は思うのだ。融にとっては、大切な肉親である上に、惨い形で命を失ってしまっている人なのだから。
「串刺し鳥肉男。その名前を気軽に口にしたからには、これから話すのは何か有用な発言なんですよね?無益な発言の場合、即刻始末させていただきますが」
「こわ」
と白狐の万理が呟く。
「有用だろうな。正確に言うなら、俺と落日が禁書の管理者で灯は禁書そのものだ」
「融さんのお母様が、禁書?」
「その言葉の使い方は、正確ですか?」
と融は温度の低い声音で、とらつぐみ、もとい甲子童子に尋ねた。
「正確だ。禁書は挑文師の叡智がつめ込まれている。書物のように収められるものじゃない。一人分の人の中に編み込む必要があるんだ。寧月灯はその器を持っていた」
「編み込んだのは、あなたですか?それとも、その落日さんという方でしょうか?」
「俺と落日以外にも編み込んだメンバーは、もっとたくさんいたが、大抵は死んでいるな。その後、原因不明の事故に巻き込まれたり、事件を起こしてしまったりしていた。禁書の内容に耐えられなかったようだ」
淡々と話す割りに、話の内容はヘビーだ。禁書を編み込むのは、禁術と同様の負荷がかかる行為なのだろう、と私は想像する。
ただ、融の反応が気になった。こんな形で暴かれていい話なのかどうか。そして、こんな風に触れていい話なのかどうか、私には判断できない。
「お前たち、動物品評会をしてどうする。そんなことより、惚けた女、お前、落日(らくじつ)に会っただろう?」ととらつぐみがおもむろに口にした。
「落日?」
「紅い女だよ。黒く長い爪を持つ恐ろしい女だ」
と端的に言うけれど、それだけで意味が通じた。たしかに彼女は紅かった。
「恐らく、会っていると思うけど。彼女は一体?」
「落日は禁書の管理者だ。寧月灯と俺と共に禁書を管理していた」
そう口にしたとたん、レッサーパンダもとい、融からツウっと冷気が立ちのぼって来た。かと思えば、融は変化を解き元の姿に戻る。
その名前を覚悟もなく、気軽に口にしてはいけない、と私は思うのだ。融にとっては、大切な肉親である上に、惨い形で命を失ってしまっている人なのだから。
「串刺し鳥肉男。その名前を気軽に口にしたからには、これから話すのは何か有用な発言なんですよね?無益な発言の場合、即刻始末させていただきますが」
「こわ」
と白狐の万理が呟く。
「有用だろうな。正確に言うなら、俺と落日が禁書の管理者で灯は禁書そのものだ」
「融さんのお母様が、禁書?」
「その言葉の使い方は、正確ですか?」
と融は温度の低い声音で、とらつぐみ、もとい甲子童子に尋ねた。
「正確だ。禁書は挑文師の叡智がつめ込まれている。書物のように収められるものじゃない。一人分の人の中に編み込む必要があるんだ。寧月灯はその器を持っていた」
「編み込んだのは、あなたですか?それとも、その落日さんという方でしょうか?」
「俺と落日以外にも編み込んだメンバーは、もっとたくさんいたが、大抵は死んでいるな。その後、原因不明の事故に巻き込まれたり、事件を起こしてしまったりしていた。禁書の内容に耐えられなかったようだ」
淡々と話す割りに、話の内容はヘビーだ。禁書を編み込むのは、禁術と同様の負荷がかかる行為なのだろう、と私は想像する。
ただ、融の反応が気になった。こんな形で暴かれていい話なのかどうか。そして、こんな風に触れていい話なのかどうか、私には判断できない。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
御手洗さんの言うことには…
daisysacky
ライト文芸
ちょっと風変わりな女子高校生のお話です。
オムニバスストーリーなので、淡々としていますが、気楽な気分で読んでいただけると
ありがたいです。
雰囲気で読む話
塩バナナ
ライト文芸
何でもかんでも雑多に詰め込んだ短編集
深く考えず、雰囲気で読むもの
一話一話が大分短いです
たまの続き物は章で区切ります
ホラーになりきれないものとか、同性愛に補完しても読めるなってものもありますがそれは読み手次第です
ある意味注意です
霊力兄弟の章はうちの別作品『霊力の高い俺は弟と一緒に異世界転生したようです』のキャラが出てくる話です
ネタバレ注意?
【完結】お嬢様は今日も優雅にお茶を飲む
かのん
ライト文芸
お嬢様、西園寺桜子は今日も優雅にお茶を飲む。その目の前には迷える子羊(幽霊)が。
これは、お嬢様に助けを求める迷い子(幽霊)達を、お嬢様が奉仕の心(打算的目的)で助ける物語。
おしゃべり本屋のお人柄
流音あい
ライト文芸
話好きな店主がいる本屋さんと、そこを訪れる客との交流のお話。静かに選びたい人もいる中で、おしゃべり好きな本屋の店主は疎まれることもしばしば。しゃべり過ぎる自覚がある店主は、大好きなおしゃべりを控えようとするが……。
1、おしゃべりな店主
2、アドバイスは適切に
3、あるまじきこと
4、贖罪、進展、再構築
5、おしゃべり本屋の噂の実態
6、おしゃべり店主のご紹介
【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します!
夕姫
ライト文芸
Vtuber事務所『Fmすたーらいぶ』の1期生として活動する、清楚担当Vtuber『姫宮ましろ』。そんな彼女にはある秘密がある。それは中の人が男ということ……。
そんな『姫宮ましろ』の中の人こと、主人公の神崎颯太は『Fmすたーらいぶ』のマネージャーである姉の神崎桃を助けるためにVtuberとして活動していた。
同じ事務所のライバーとはほとんど絡まない、連絡も必要最低限。そんな生活を2年続けていたある日。事務所の不手際で半年前にデビューした3期生のVtuber『双葉かのん』こと鈴町彩芽に正体が知られて……
この物語は正体を隠しながら『姫宮ましろ』として活動する主人公とガチで陰キャでコミュ障な後輩ちゃんのVtuberお仕事ラブコメディ
※2人の恋愛模様は中学生並みにゆっくりです。温かく見守ってください
※配信パートは在籍ライバーが織り成す感動あり、涙あり、笑いありw箱推しリスナーの気分で読んでください
AIイラストで作ったFA(ファンアート)
⬇️
https://www.alphapolis.co.jp/novel/187178688/738771100
も不定期更新中。こちらも応援よろしくです
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
隣の古道具屋さん
雪那 由多
ライト文芸
祖父から受け継いだ喫茶店・渡り鳥の隣には佐倉古道具店がある。
幼馴染の香月は日々古道具の修復に励み、俺、渡瀬朔夜は従妹であり、この喫茶店のオーナーでもある七緒と一緒に古くからの常連しか立ち寄らない喫茶店を切り盛りしている。
そんな隣の古道具店では時々不思議な古道具が舞い込んでくる。
修行の身の香月と共にそんな不思議を目の当たりにしながらも一つ一つ壊れた古道具を修復するように不思議と向き合う少し不思議な日常の出来事。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる