上 下
36 / 228
消えた生徒を探しましょう

1

しおりを挟む
 私たちが保護した御子柴ルイはクリニックの手伝いをしていたり、近所付き合いをしていたりと、とても外交的だ。
 目は見えないようだったが気配を人一倍察するようで、
「見える以上に見えていますから、心配ご無用ですよ」
 と言う。

 そして一人で出かけていく。自由行動は問題ないけれど、保護するために連理の腕輪をはめてもらっている。連理の腕輪は挑文師が対象物をマークする時に使う腕輪だ。

 自分の記憶の糸を一本でも腕輪に編みこんでおけば、その挑文師の目と繋がる。私と融の記憶がそれぞれ編みこまれているので、御子柴ルイの身に何かが起こったときには、私たちは察知できるようになっていた。

「御子柴さん」と一度私が呼んだら、「ルイしゃんと呼んでくださいな」と言うので、ルイしゃんと呼ぶことにしていた。

 ルイしゃんは、時折アライグマに変化する以外は、八十から九十がらまりの女性の姿で過ごしている。ちなみに、ルイしゃんの穏やかな人柄に心が和んでくるので、私には彼女を保護している感覚がまるでない。
 ルイしゃんと朝のビュッフェで朝食をとりながら一緒に話をするだけで、心が和んでくるのだ。
しおりを挟む

処理中です...