♡バカップルでごめん♡

暗殺完了

　なぜ、輝夜が冬茜あやせを名乗ったのか。
　それはとても単純なことだった。冬茜あやせを暗殺したからだ。

　その日、輝夜が自由接触や自由外出禁止令を解くために話をつけに行ったところ、冬茜あやせの部屋に環の盗撮映像や数々の盗品が残っていたようだ。

　学内裁判をかけるはずが、輝夜の過激なシンパが彼の采配を待たずにうっかり暗殺してしまったらしい。冬茜あやせは風紀委員として確固たる地位を持っていたため、秘密裏に存在を消すのは難しかった。

　ちょうど廊下を歩いていた擬態上手なモンスター、ミミックと契約を行い、輝夜は冬茜あやせに化けることに成功したのだ。その代わりに、秋彌輝夜がどこにもいなくなってしまったことで、学内は大騒ぎだ。

　審美愛愛党の党首であり、学園内の羨望の眼差しを一挙に受けていた彼が消えてしまったのだから。心投票選挙が迫っていることもあり、審美愛愛党は窮地に立たされていた。
　けれどそんなことは、環と輝夜には割とどうでもいいことだ。

　環はサキュバスとの契約が切れてしまったことで、学内での地位は一気に落ちた。ぱぁん、と弾けんばかりのボディを目当てに彼女に投票していた層が、一気に去って行ってしまったからだ。

　政局は変わり、今や律心友友党が優勢となっていた。夏嶺からすれば願ったりかなったりの状況だ。
　冬茜あやせの姿を手に入れた輝夜は、風紀的指導の名目で環と日々接触して来る。

「春黎環さん、風紀的指導をします」
　そうやって冬茜が声をかけてくるのを、環は毎日待っていた。

「何よ、風紀的指導なんてされるいわれはないけど？」
　とつんつんと答えながら、冬茜の部屋に行く。

　そして、環がとろとろの顔で出てくることを、誰も知らない。