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口撃にはすべて、愛しかない

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「当てにならないのが恋だ。恋恋党なんて、俗物的で曖昧な概念をかかげている以上信用ならない」
「愛こそが曖昧だと思うけれど?恋こがれて、そのエネルギーを活力にしている学生は多いと思う」
「活力の程度が知れる。だが世俗的な目的に使うならば、そのエネルギーも効果的だろう」

 環は言葉をつまらせるが、彼の言い分に言葉をつまらせているわけじゃない。

 ――――カッコイイ!素敵。

 とただその声に痺れているだけだ。

「ああ、相変わらずの討論だ。これでこそ春黎党首と秋彌党首ですね」
 夏嶺はそう言って、春黎に視線を送って来る。先ほどの取引のことを匂わせているようだ。

「考えておいてください、春黎党首」
 と言って夏嶺は部屋を出て行く。
 ドアがしっかりと閉まったのを確認し、さらに環はドアに耳をあてて夏嶺が廊下を歩く足音を確認した。そして、輝夜と視線を交わす。

 環が唇を噛みしめてみせれば、輝夜はそっぽを向いた。
「輝夜」
 と言っても応えてくれない。環はそばによっていって、恭しくその手を取る。

「ごめんなさい」
 と言おうとすれば、
「夏嶺流を今から殺してきていいか?」
 と返って来た。殺気をまといはじめているので、環は首を横にふる。

「愛愛党の党首が、直接殺生するなんてだめ。せめて、アサシンを雇わないと」
「昼間のことを気にしているのか?」
 と聞かれて再び首を横にふる。
 今日の党会では建設的ではない口喧嘩をしてしまった。



「春黎環、お前は可愛げを前世に置いてきただろ?お前みたいなのが恋だとか言って、党首をやっているのが信じられない。お前に夢中になる奴の気が知れないな。俺だったら、絶対に抱けない」

「秋彌輝夜、そっちこそ傲慢で不遜。人心掌握なんて夢のまた夢。審美や愛だなんて、どの口が言うのかしら?頼まれたってそんなことにならないから、安心して?」

 今日もまたそんな口喧嘩をしたように思う。けれど、環の中では、

「何回転生してもお前だけが可愛いに決まっている、夢中になる奴なんかみんな葬り去ってやりたい。今すぐにでも抱きたい」
 と。翻訳されている

 環の言葉は、
「あなたの孤高さがたまらない。審美愛はあなたのための言葉。今すぐにでもあなたの腕に抱かれたい、らぶらぶきゅんきゅん」
 そんな風に翻訳できる。

「全部ちゃんと愛の言葉に翻訳されているもの」
 環が言ったら、ほろほろと輝夜の冷たい表情がほどけ、柔らかな笑みに変わる。
「よかった」
 抱きしめられて環はきゅうんとただならぬときめきを感じた。

「大好き~!」
 と環が抱きしめかえしたら、
「俺の方が好きだ」
 と輝夜は言う。

「うそ、私の方が好きだもん」
「いいや、俺の方が好きだ。それだけは譲れない」
 輝夜の言葉をきっかけに、熱っぽく見つめ合う。

「し、よ?」
「ああ」
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