♡バカップルでごめん♡

KUMANOMORI(くまのもり)

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ハスキーボイスじゃ、ない

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 カーテンが開いて、その人が入って来た気配がしたから、環は勢いよく抱きついた。

「かっぐや~!会いたかった~!」

 本音の本音をいつも口に出来ずに、苦しい毎日だ。
 大好き、大好きなのに!

 今は首に手をまわしてめいっぱい抱きつく。胸を押しあて足を巻きつけんばかりに抱きしめたら、彼が腰を引くのが分かった。

 ―――――え!?なんで?

 いつもなら、そのまま有無を言わさずに抱きしめてきて――――そのまま――――

「春黎党首!?」
 柔らかで滑らかな声音がしたので、即座にエラーを察知した。輝夜の声じゃ、ない。彼の声はハスキーで、聞けば即座に環はしびしびっと全身が痺れてしまうのだから。

「えっ!?」
 環は身体を離し、自分が抱きついた相手を見る。背の高さは彼と相違ないけれど、冷酷無比な冷たさをたたえる彼とは対照的な、人好きのする柔和な顔つきの男がいた。

「夏嶺流(かりょう ながれ)……」
 フルネームで言ってしまってから、環は事の重大さを悟る。相手は口元ににやりと笑みが浮かべ、わざとらしく首をかしげてこちらをうかがって来た。

「輝夜って呼んでいましたよね。秋彌党首のことですか?」
「き、聞き間違いですよ」

 相手は環のナイトドレスの胸元をしげしげと眺めて、ふぅん?と鼻を鳴らす。

「流石に、恋恋党首の身体は魅惑的ですね。人心を集めるだけある」
 環は慌てて胸元を手で腕を隠した。こんな服装を普段の生活で見せたことはない。普段はブラウスのボタンは全て止めているし、スカートには布を足して肌の露出は極力抑えていた。たわわなバストが目立つような服装は好まない。
 焦らして焦らして人心を集める。そうやって票数を獲得してきた。

「ごめんなさい、間違えたみたい」
 と環は後ずさる。そして、寝台の上に腰をおろした。
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