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緑と黄

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 高校受験の模試帰りに、駅前の小さな花屋を見つけた。
 その日の模試は、あまりに出来が悪くて、自己採点でも今までで一番最悪だ。志望校のランクを落とすか、このまま進むかを迷っていた時期だったので、とてつもなく落ち込んでいた。

 その帰り道に、駅前の花屋に同年代の女の子を見つけたのは、きっと何かの暗示だったのだと思う。
 店じまいの支度のようで、母親のような女性と一緒に、店先に出ていた花を一部移動させていた。

 通りがかりに、視線を送ってみたらお辞儀をしてくれる。
 こちらも会釈し返した。それだけのやり取りだったけれど、なぜかその子に対して、俺は勝手な愛着が湧いてしまう。

 駅前の小さな花屋さんの女の子。
 俺の中では、何かいやなことがあった日には、その店の前を通るのがルーティン化していった。

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