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ロンダリング

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 そして二人が仲良くくっついて眠ったのを見届けた後で、リビングでブリザーブドフラワーにした矢車草の入った青いボトルを渡してくれる。

「可愛がっといた」
 と言う。
「なんか、きざ」
 と私は思わず言ってしまったら、緋々来はけらけらと笑った。

「いいんだよ、華道家はきざなくらいが、ちょうどいい」
「あの姿は、緋々来だとは思えないな」

「そうだな。どんな形でも良かったんだよ。逃げられれば。母親の実家にいるわけにはいかなかったから」
 どうして、と聞こうとしたら、唇に指を添えられた。

「オレの親のことは知ってるんだろ?そんで、花菜野の親のことも」
「うん」
「あの画集のことに触れてきて、作品に罪はないって言ってくれた。それだけで、オレは碧衣に陥落したんだよ」

「なに、陥落って」
「好きになってた」
 と視線を逸らすことなく言う。私は恥ずかしくて、視線を逸らそうとしたら、頬に手を添えて、自分の方を向かせようとするのだ。

「人の評判はさておいて。ちゃんと、中身を見ようとする子なんだなって思ったから」
「そんなの、たまたまだよ。好きな絵だったから。好きな画家じゃなければ、そうは言わないかも」

「世間は結構冷徹だよ。評判は、刻印のようについて回る。オレはこの性格なんで、自分を責めるって風にはならなかったけどな」

「辛いことも、あった?」
 と私が聞いたら、緋々来は眉をさげて少し切なそうな笑みを浮かべる。そして、そうだな、それなりに、と呟いた。

「常盤も、花菜野もきっと。そうなんだろうな。そうだったんだろ。傷だらけの奴らは、簡単に碧衣に陥落すると思う」

「傷だらけ?」

 ――――常盤と、花菜野が?
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