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ロンダリング
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しおりを挟む心が疲れてきたと感じたときに、姉に心療内科を紹介された。
「仕方ないよ、それだけのことが起こったんだし」
と姉は言い、予約を取ってくれる。
診療帰りに鳩羽を迎えに行く途中で、
「会えない?」
と緋々来から連絡がくる。
心の中にサッと風が吹くような気がした。
でも、
「会わない」
と連絡する。
何を信じていいのか、誰を信じていいのか、分からなくなっていたからだ。
そのまま園に向かったら、園の前で緋々来に居合わせる。
「何してるの」
周りの保護者の目もあったので、私は小声で緋々来に声をかけた。
「何って。子どもの迎え」
と言ってくるので、思わず緋々来の目を見る。
「子どもいるの?」
と聞いたら、笑われた。
「いねぇよ。鳩羽と日羽のこと」
とさらりと言うけれど、
「事前に登録されていない人じゃ、園が受け渡してくれないよ」
と私は言う。
「そりゃそうだろ。オレは碧衣が来るの待ってただけ。でも、二人のことは他人じゃないとは思ってるから」
という緋々来の言葉に、裏を読みそうになった。
鳩羽と日羽は――――
「いいから。迎えに行って来いよ。少し話すくらいいいじゃん」と言う。
私は園の中に入り、鳩羽と日羽を迎えに行った。
私は日羽を預かっている。
花菜野の残した日記にあった記述を見て、花菜野のお母さんが私に日羽を預けたいと言い出したのだ。
日羽の身の安全を確保したい、というのだった。
その日記を見つけた後から、花菜野のお母さんは実家のある別の県へと引っ越してしまった。
私の周りからは、知り合いがことごとくいなくなってしまう。
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