あいつの身体を手に入れた日、私は。～その友達はヤンデレの味がした～

求めていた穏やかな時間

2

「花菜野は、日羽と眠ったことはないの。いつも避けていた」
「え？そんな話聞いたことなかった。避けていた？送り迎えはいつもしていたと、思ったけどな」

「それは碧衣ちゃんが朝からの出番で、碧衣ちゃんが送迎の日だけ。遅番の日や定休日で預けない日は花菜野も送迎はしない。日羽の行事だけは碧衣ちゃんが来るから行くと言っていたけれど、基本的には近づこうとしないわ。碧衣ちゃんがいなければ、日羽の世話もまったくしなかったと思う」

　姿見で自分の髪の毛を整える日羽を見やりながら、お母さんは言う。

「そんなこと、知らなかった」
「碧衣ちゃんのお陰で、花菜野のやる気が引きあげられていたとも言える。ありがたかったけれどね。色々な部分でそうなのよ」
　と結ぶ。

「もう、行こうよぅ、あーちゃん」
　と日羽が私の手を引き出したので、このあたりで行くことにする。

「行ってきまーす」
　と私は花菜野のお母さんに行って、日羽と出かけた。

　あーちゃん。
　思えば私のことを、花菜野は昔そう呼んでいたな、と思う。

　その時代が、懐かしかった。