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龍の戯れと閉幕
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即位式は続かなく進行し、寛麒は新しい麒鞠王になるかと思われた。寛麒は恭しく宝剣を受けとり、王座に座った途端に、
「それでは、これから私は朗麒に譲位いたします」
一同に動揺が広がる。
前麒鞠王である壮麒だけは、辛抱ならない奴だと呟くのみだ。
「兄上何をおっしゃっているのです」
最も動揺していたのが朗麒本人だった。
「そなたに王位を譲位する。よってそなたが今から麒鞠王ということだよ。こちらへ」
と寛麒は言う。
朗麒からすれば寝耳に水だ。麗虎と虎煌は顔を見合わせており、虎牙はなるほど呟いている。
「母上の玄毬の運、そして婚外交際の縁、すべてを考慮した結果。そなたが一番適任だ」
婚外交際の際に、虎煌に視線を向けるのを忘れないあたり、寛麒も抜け目がない、と静は思った。
「理解しかねます」
朗麒は戸惑いを隠そうとしない。ふって来た即位話に戸惑うのも無理はなかった。
「即位してから真実を知ればいい。私はここで退位されていただくよ」
寛麒は至って鷹揚に語る。
即位して数秒で譲位する王など聞いたことがない、と晶亀が独り言つのを静は聞いた。滅茶苦茶だな、と虎牙も呟く。
碧羅と紗紅那の面々は、やや遠巻きにこの様子を見守っていた。権力に関する執着は、白露が最も強く、人情に関しては玄毬が最も求めるところだ。二家を納得させられるならば、碧羅も紗紅那も自ら多くを発言する必要はない、と現状では思っているようだ。
「朗麒が即位することに賛成であるなら、杯をかかげていただきたい」
全員が杯をかかげ、朗麒の即位が決定する。朗麒本人は青天の霹靂で、
「兄上、どういうおつもりです?」
と寛麒に詰め寄っていくのだ。朗麒は自身の出自について聞かされててはおらず、降ってわいてきた権利に戸惑うばかりなのだろう。
「それでは、これから私は朗麒に譲位いたします」
一同に動揺が広がる。
前麒鞠王である壮麒だけは、辛抱ならない奴だと呟くのみだ。
「兄上何をおっしゃっているのです」
最も動揺していたのが朗麒本人だった。
「そなたに王位を譲位する。よってそなたが今から麒鞠王ということだよ。こちらへ」
と寛麒は言う。
朗麒からすれば寝耳に水だ。麗虎と虎煌は顔を見合わせており、虎牙はなるほど呟いている。
「母上の玄毬の運、そして婚外交際の縁、すべてを考慮した結果。そなたが一番適任だ」
婚外交際の際に、虎煌に視線を向けるのを忘れないあたり、寛麒も抜け目がない、と静は思った。
「理解しかねます」
朗麒は戸惑いを隠そうとしない。ふって来た即位話に戸惑うのも無理はなかった。
「即位してから真実を知ればいい。私はここで退位されていただくよ」
寛麒は至って鷹揚に語る。
即位して数秒で譲位する王など聞いたことがない、と晶亀が独り言つのを静は聞いた。滅茶苦茶だな、と虎牙も呟く。
碧羅と紗紅那の面々は、やや遠巻きにこの様子を見守っていた。権力に関する執着は、白露が最も強く、人情に関しては玄毬が最も求めるところだ。二家を納得させられるならば、碧羅も紗紅那も自ら多くを発言する必要はない、と現状では思っているようだ。
「朗麒が即位することに賛成であるなら、杯をかかげていただきたい」
全員が杯をかかげ、朗麒の即位が決定する。朗麒本人は青天の霹靂で、
「兄上、どういうおつもりです?」
と寛麒に詰め寄っていくのだ。朗麒は自身の出自について聞かされててはおらず、降ってわいてきた権利に戸惑うばかりなのだろう。
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