上 下
81 / 90
龍の戯れと閉幕

1

しおりを挟む

 静が剣を振るえば、寛麒が鞭でいなす。まるで演舞のような軽やかなやり取りである。
 婚姻式での演舞が思い出されて、静の口許には笑みが浮かんでくるのだ。静は木気を四方へ放ち、誰かれ構わず剣を振るう。
「おい、やりすぎだ、静」
 と劉龍が言い、飛鳥や虎牙は静の意図を探るように見守っていた。

 さすがの虎牙であっても事情が飲み込めない様子で、「お前の情人は、ご乱心のようだな」と飛鳥へ皮肉を述べるのみだ。
「ほお、面白いの」と麗虎が呟いて、静から伸びてくる蔓を払う。
「麗虎様、お手柔らかに」

 蔦で麗虎の剣を巻き取り、すぐに別の相手へと切っ先を向けた。飛鳥を見つけ、静は戯れ紛れに剣を向けてみる。飛鳥の瞳が光り、静へその真偽を問うていた。さあ、遊びましょう、飛鳥、と静は言葉を木気に乗せる。

 静が剣を振るえば、飛鳥もまた剣で受けた。だが、押し返す力は弱く、遠慮が見える。こんなものではないはず、もう少しやる気を見せてくれてもいいのに、と思い、静がさらに剣を振るえば、飛鳥は静の剣の力を受け流すような動きをするのみだ。

 飛鳥と正面から闘ったならば、どちらが勝つのだろう?

 そんな野心が芽生えたとき、脇腹に鋭い金気を感じ、静は飛びのいた。虎牙だ。虎牙が斧で容赦なく切りかかって来るので、剣で弾き、慰め程度の蔦を巻きつけ動きを封じる。

 虎牙は瞬時の蔦を引きちぎるので、静は苦し紛れにその斧へ一撃浴びせかけた。五行の相性としても、同年代の中で最もやりにくいのが虎牙である。

「お前が巽宮当主か、先を越されたな」と言いながらしつこく追われるので、突風を起こし距離を取った。

 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

今、夫と私の浮気相手の二人に侵されている

ヘロディア
恋愛
浮気がバレた主人公。 夫の提案で、主人公、夫、浮気相手の三人で面会することとなる。 そこで主人公は男同士の自分の取り合いを目の当たりにし、最後に男たちが選んだのは、先に主人公を絶頂に導いたものの勝ち、という道だった。 主人公は絶望的な状況で喘ぎ始め…

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?

ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。 しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。 しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…

処理中です...