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即位式

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 その後、王座に座す現麒鞠王、壮麒が王座から降り、寛麒に宝剣を手渡せばそれで、即位式は完遂となる。
 だが、想像通り式開始からまもなく、玄毬の晶亀から待ったがかかる。

「寛麒様は30年運での婚姻とは異なる、異例のお生まれでおられる。本来ならば、朗麒様がおふさわしいのではないか」と。
 低く呻くような晶亀の言葉は、そばに控えていた朗麒が驚くほどだ。

 朗麒はなぜ私が、と漏らす。朗麒は実直で生真面目だ。寛麒はまるで似ていない。それはそうだ、と今では寛麒は思う。
 自分と朗麒はまるで違う出自であり、祝福を受けているその一点のみの繋がりである。とはいえ、朗麒のことを寛麒は好ましく思っていたし、弟として親しみを持っていた。

「晶亀殿の言い分はもっともだと思います」
 と寛麒が簡潔に述べれば、
「兄上、何をおっしゃられるのです」
 と朗麒が声をあげる。

「とはいえ、私自身は王の退位自体が時期尚早では、と思っておりますが」と寛麒は壮麒を見すえた。壮麒は片方の眉をあげ、
「呪を受け、もはや気力もない。今さら何を言っているのだ」
 と言うのみだ。

 どの口がおっしゃられるのか、と寛麒は思う。呪と言うが、后に頼んで施してもらった形ばかりの呪である、蛇が現れでる程度の悪戯である。寛麒や静を狙ったものとは、全く別物だ。寛麒は言葉もない。父は完全に全てを自分に任せるつもりでいるようだ。恐らくは全て、自らの望みのために。

 王も后も傀儡のような今の状態が正しいとは、寛麒も思ってはいない。遺恨が生まれ、誤解も生まれている。とりわけ現在甘い蜜とは無縁である、玄毬からの不満は予想された。白露に関しては誇りのぶつかり合いが厄介だ、と寛麒は見ていた。

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