神獣たちの戯れ・碧羅姫と麒鞠王子の縁組~婚外交際のすすめ~

KUMANOMORI(くまのもり)

文字の大きさ
上 下
74 / 90
麒麟王の退位

1

しおりを挟む

 その夜、麒鞠王退位の一報が牢の中にも届く。そして、次期王として寛麒の名が周知される。一夜のうちに広がった一報により、乾宮内がざわめき始めたのを静は感じた。更に翌朝になり寛麒の即位式が行われると通達が来たことにより、乾宮内は大わらわだ。
 投獄されているとはいえ王子后である静もまた、無関係ではない。寛麒が即位するとなれば静は王后となるからだ。


 翌朝、虎雨がやって来て、牢から出るように言う。五家の協定にかけると言うのだ。五家の協定では、出身家以外の、各当主や次期当主格が裁きの内容が正当であるかどうかを判断する。

 裁判所へ連れていかれ、静にくだされた判決は、王后の座からの退位だ。権力に固執していない静からすれば、随分と手優しい判決だ、と思う。とはいえ、寛麒の即位に際し、先手を打たれた、とも言えるだろう。

 四家の判断は、麒鞠王と麗虎、離宮当主、晶亀や次期当主で行われるようだ。麒鞠王は退位の意思を示しているとのことで、寛麒に判断を委ねる可能性が高い。虎煌も含め、二対二の構図を想像していたようだ。しかし、各当主から送られた通知により、満場一致により静の王后退位が決定した。

 眉一つ動かさない虎煌ですら、さすがに驚きを隠せないようだ。離宮当主と寛麒は反対するだろうと踏んでいたに違いない。
 虎煌に「構わないな?」と問われ、頷く。「判決には従います」と告げた。

「これで私の身は自由ですね?」
「ああ。ただし、たった今からお前は、王子后でも王后ではない」
「分かっております。しかし、後悔なさいませんか?私を釈放してしまって」

「判決が出た以上、お前を留めておく理由はない。いずれにせよ、風は留めてはおけぬものだろう。とはいえ、王子后の資格を失った今のお前の立場では即位式に行くことも叶わぬな。当主か次期当主格のみ。出戻りのいち姫は門前払いだろう」
 と虎煌は言う。静は虎煌の言葉に目を見張る。思いがけず力添えを受けたような気がしたからだ。静は一礼し退廷し、すぐさま馬を走らせて震宮に向かった。

 
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...