神獣たちの戯れ・碧羅姫と麒鞠王子の縁組～婚外交際のすすめ～

婚外交際のすすめ

3

　見張り兵の巡回が終わり、再び牢の周辺に気配が消えた頃、魔方陣が再び壁に現れる。誰が来たのかは分かるが、何のために来たのかは分からない。静は魔方陣を見つめ、瑠亀が現れるのを待っていた。初っ端から攻勢に出られたらやりにくい、と思うものの、瑠亀は至って静かに登場する。

「お久しぶりです。静龍様」
「ええ、お越しいただいてありがとうごさいます、瑠亀様」
　瑠亀からは感情の起伏が見えない。静を討ち取りに来たわけではないようだ。

「さきほどは璃蛇様がお見えになりました。わざわざご足労いたたぎありがとうごさいます」
「妹からは話をお聞きしております。静龍様、前置きは抜きにして単刀直入にお聞きしたい。麒鞠の秘密とはなんです？」
「そうお聞きになるということは。麒鞠の秘密のいかんいより、今後の玄毬の未来が占えるということでしょうか？」
「その通りです。妹の無礼は謝ります。申し訳ありません。ただ寛麒様と静龍様との婚姻は阻まなければならない、と当主が申しておりましたゆえのこと。妹は何も知りません」

「それは碧羅が力を持つことへの恐れでしょうか？あるいは珠蛇様、現王后様の不遇を払いのけた思いでしょうか？」
　静の問いに、瑠亀は眉をあげる。

「その話は一体？」
　瑠亀もまた、璃蛇同様、詳細をきかされていないようだ。
「瑠亀様。現王后様は瑠亀様の叔母君ですよね。そして、現当主様の妹君です」
「そうです」
「けれど、我が……夫。寛麒の母君ではありません。次期麒鞠王と目される彼の母君は碧羅の者です。ご存知でしたか？」
　夫と言うのには抵抗があったが、この際構ってはいられない、と静は思う。

「いいえ。私も寛麒様とほとんど歳が変わりません。その頃のことはなにも知られておらず、分かりかねます」
「碧羅の母を持つ寛麒が、碧羅の出の私と婚姻し、更に子を成したのならば、碧羅が力を持ちすぎてしまう。そう恐れを抱く方も恐らくはいらっしゃるかと。たとえ碧羅の運であったとはいえ」
　ただそれは、麒鞠の秘密を知らない者の発想だ。