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裁き
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しおりを挟む「虎雨様。お引き取りください。私が求めていたのは、あなたではありません」
「無理な相談です」
虎牙とよく似た容姿に、柔らかな表情を浮かべている虎雨の金気が高まるのを感じ、静は身構える。虎雨の気は、虎牙とは違いゆらゆらととらえどころがなく、かえってやりにくいと感じた。
「誰からの依頼なのかは分かりませんが、上手く利用されているだけです」
「静龍様には関係のないことです」
四方から細い鎖が飛んできて、静の身体をとらえにかかる。静はすんでのところで交わすが、卵の方へと伸びた鎖には手が届かない。
しまった、と思った瞬間に、隙が生まれ左手首に鎖が巻きついた。虎雨が鎖を引き寄せるのが分かったので、
「ち」
と舌打ちをして、静は手首をひねり無理やり外す。
激痛が走るが、卵の様子が気になった。卵の封印は麒鞠の封印だ。金気ですぐに破れるとは思わなかったが、虎雨が鎌を振りかざすと、割れるような音がして封印が解けた。
静は蔦を放り、卵を巻き取って腕の中に収める。しかし、左腕の痛みで反応が鈍っているのはたしかだ。
「静龍様、お渡しください。さもなくば強引な手を使わざるを得なくなります」
卵に関しては、協力してもらった手前、必ず護らねばならない、と思っている。
傷を付けてしまえば、静は自分を許せない。
静は卵を即座に蔦でくるみ、床に片手をついた。虎雨は静が体勢を崩したと思ったようだ。搦め手として、鎖を放って来る。静は床に木気を放つ。太い幹が床から現れ出た。
「なに」
虎雨が目を見開いた瞬間に、静龍は幹に蔦を絡め、幹に結びつける。さらに伸びていく幹は天井を突き破った。
「連。今のうち」
静が声をかけると、幹に結ばれた卵は、光を放ち割れていく。天井のすき間から、桃色の尾を持つ、橙色の鳥が飛んでいった。
虎雨が変化を行い、白の虎が幹を登っていこうとするのを見て、静は風を練る。風気を放って虎雨を数秒足止めし、産屋の窓から外を見た。無事に逃げおおせたのを確認し、ホッと一息つく。
しかし、刀が頬に突きつけられる気配を感じ、静は振り返った。
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