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謀略
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しおりを挟む寛麒とは対照的に、艮宮にて静が作戦を話した際の、飛鳥の様子は猥雑だった。
額に手を当てすっかりと悩んでしまっている。
「意図は分かる。けれど、静は分かると思うが、オレはこけおどしができるほど器用ではないんだ」
「知っているし、そして今は前以上に分かる。飛鳥は真っすぐで清らか。だからこそ、飛鳥の発言は、信頼されると思う。私の子は、実は自分との子だと主張してくれればいい。隠し立てすることではない、と不遜なくらいがいい。そうすれば、より広く噂の種まきができるもの」
静の言葉に飛鳥はため息をつく。
「オレはそんなに不遜に見えるのか」
「飛鳥は私よりもはるかに器用だと思っていたけれど。この頃は、火の気がまったく飼いならされていないもの」
「寛麒様にも言われたが、静がなぜオレのそばにいないのか、と思っているのはたしかだ。子どもじみているし、狭量すぎて情けないが。公式には触れあえないと思うと、やはり苦しいんだ」
「私の気は、飛鳥を増長させる。飛鳥のような火気が強い人は、水気により多少剋されたら、ちょうど良いのかもしれないけれど」
と静が意地悪を言うと、飛鳥はうろたえる。
「意地悪を言うのはやめて欲しい」
情けない声をあげる飛鳥を、静は愛おしく思う。
顔を寄せて飛鳥の鼻先に鳥の啄みのような口付けをする。
「可愛らしい飛鳥も好きよ」
「まるで子ども扱いだ」
頭を振り、顔をふせる飛鳥の額に、もう一度口付けをした。
「たまには、私が姉のようになっても良いと思わない?」
「静が落ち着いてしまったら、オレはより情けなくなってしまう。ただ嫉妬に駆られる愚かな男でしかない」
「関係を隠すことはないもの。寧ろ今は、それを利用できる」
「関係とは、身も蓋もなく尾を結び付け合い、子を成した、と?」
「そ、その言い方はどうかと思うけれど。つまり、飛鳥はその方法を知っているということね」
「知っている。紗紅那と碧羅との婚姻の例を、文献で読み漁ったこともあるくらいだ」
「私はそんなの、知らなかった」
「知らなくてよかった。加護を受けたばかりの静は、神獣の姿が楽しくて他家の者と戯れていたから。遊び感覚でまかり間違えば、大変なことになっていたと思う」
「失礼な!そこまで愚かではなかった、と思うけれど」
静に限ったことではないが、神獣の加護を受けた者は、人の姿以上に、神獣の姿では恥じらいが少なくなる。それに加護を受けたての頃の静は、今以上におさまりどころのない性質だった。
「とはいえオレもまた、静とのことを夢想したことはあるけれど」
飛鳥の突然の告白に、静は言葉を失う。飛鳥と神獣の姿で戯れたことは数知れない。
加護を受けた神獣同士の婚姻の場合、神獣の姿で交配を行い、それぞれ母親の出自にそった形で卵生、胎生により子を成す。
胎内で育てる白露以外は、全て卵生で生まれると言われている。神獣の加護を受けている五家の者は、仮に人の姿で身体を重ねたとしても、子を成すことはないのだ。当然、静は交配を行ったことがない。その方法を知ったのは、つい最近だ。まさか飛鳥が以前より知っていたとは、静は思いもしなかった。
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