神獣たちの戯れ・碧羅姫と麒鞠王子の縁組~婚外交際のすすめ~

KUMANOMORI(くまのもり)

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謀略

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「鈴龍様のことはご存知ですか?」
 静の言葉に、王后の目の色が変わるのが分かった。

「なぜ、あなたからその名が出てくるのかは分かりませんが、勿論存じ上げております。寛麒の母君であり、王を愛した方です」
「その言いぶりですと、王后様は、王を愛していないかのように聞こえます」
 王后は首を横に振る。

「尊敬はしています。けれど、私はいつも惑ってばかりでした。鈴龍様のような覚悟はありません。ゆえに、今この軋轢が生まれているのでしょう。ただ、祝福を与え、全てを受けとめる王の孤独を理解はしているつもりです」
「そうですか」

「私の知っていることはお話しましたよ。子のことをお聞かせ願えないかしら」
「私にまつわる婚外交際の噂はご存知ですか?」

「それは、紗紅那の?」
「はい」
「非常に強い火の気を持つ、離宮当主にふさわしい者だと聞いています。もし、それが真実ならば、ゆくゆくは麒鞠王の座は確実でしょう。だとすれば」

「あの子の身は、危険でしょうか?呪を浴びせられることもありますか?」
 静の言葉に、王后は目を丸くする。静は王后を謀るつもりはない。とはいえ、種は蒔いておかなければいけない、とも静は思っている。全て通じたかどうかは分からなかったが、王后は頷く。

「危険です」
「だから麒鞠の子は、幼いときに人を避けるのですね」
「そうです。けれど、静龍あなたはそれをどこで?」
「愛息を案じてやまない神獣が教えて下さりました。恐らく、王后様が朗麒様、楊麟様を案じておられるように」

「そうですか。かの方は、どこまでも、覚悟のある方だったということですね」
「お話できてよかったです。王后様を私は信じます。私のことも信じていただければと思います。決して、誰かを傷つけることはしません」
 静がそう言うと、王后は静の元へと手を伸ばし握手を求めてくる。

「寛麒は良き人を迎えましたね」
 と王妃は言う。静が握手に応え、
「食えない王子に、食えない姫。私たちは恐らくそのようなものかと思います」
 と言うと王后は笑った。
 王后との話はそうして、終わりとなった。

 本来静は嘘が得意ではない。ただ飛鳥よりはまだ、ましに嘘をつけるようだ。この話を受けて王后自身は何かを起こすとは思えないが、王后との関係により、力を笠に着た者が動き始める可能性は高い。

 裏のとれている兄妹たちには既に話をしており、協力を仰いでいる。虎牙に関しては、静は少し警戒してしまうのだが、飛鳥は虎牙のような豪快な者が謀りに与するとは思えない、と言うのだ。広く吹聴してもらいたい、と言う点においては、虎牙向きの役割だとは思う。

 寛麒に至ってはまったく問題はなく、知らせを聞いた四家の者が謁見を求める度に、
「普段より懇ろにしておりますゆえ、子が出来るのも必然かと思います」
 と涼しい顔をしてさらりと嘘を吐く。
 内情を知らない者にしか通じない弁であることは、静も寛麒も分かっていた。麒鞠王子后が子を成したという一報を受けて、どのように反応するのかは、試金石となる。

 
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