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婚外交際

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 二人が伴って行った艮宮の離れは、来賓を招く部屋のようだった。接見所や寝所、湯屋もあり、住まいとしての最低限の機能が備わっているようだったが、今は完全に人払いがされている。

「寛麒が結界を張ってくれているようなの。ここなら安心して話が出来る」
 静がそう言うと、真っ先に飛鳥は静の手を取って来た。

「静、そこへ座って」
 と言われて接見所の床に二人して座す。
 そして懐から七宝の薬入れを取りだし、塗り薬を塗ってくれた。そして、手際よく布を巻きつけ、手当てを完了させる。
 かつて飛鳥が無茶な遊びで怪我をした静の手当てをしてくれることがあった。一方で、飛鳥は怪我をすることがほとんどない。手当てされるばかりだったので、静は自身の手当ての技術は高くないと自覚していた。

「ありがとう」
 しかし、飛鳥は静の手を離さずに、自分の方へ近づけさせて指へ口付けをしてくる。
「鬼脈で起こったことについて話を聞かせてほしい。そうでなければ、少々強引にでも、暴いてしまうかもしれない」
 飛鳥の目の奥が燃えているのが見えた。怒りなのか、欲の高まりなのか、紙一重の熱い感情が見え、静は驚く。

「飛鳥、心配をかけてごめんなさい。鬼脈の中で呪を受けたの。それによってこの傷を受け、別の場所に飛ばされた」
「だとすれば。呪を与えたのは、恐らく璃蛇姫だろう。先ほど探りを入れた感じでは虎牙には裏がなさそうだった」
 飛鳥は低くうめくように言う。飛鳥は本来人を疑うことは得意ではない、と静は知っていた。裏で手ぐすねを引くようなやり口を好まないし、理解もしたくない、といった潔癖さがある。

「飛鳥の言っていることは、当たっている」
「では、裁かれなければいけない。人に対し呪を使うことは許されない」
「でも、璃蛇様が黒幕だとは思えないの。あの呪そのものは、璃蛇様のものではないかもしれない」
「だとしても、泣き寝入りせよというのは、おかしな話だろ。静を傷つけたのはたしかなのだから」

 飛鳥の心配や思いはありがたかった。ただ、静にはどうしても気になることがあったのだ。鈴龍との会合により、静を排除する理由に思い当たる節ができたのだ。静は飛鳥の手を取る。
「朱鳥兄がおっしゃったように、闘い方は正面からぶつかるだけではないはず」
「しかし」
 静は顔を寄せ、子どもの頃の遊びのように、飛鳥と額を合わせる。飛鳥は目を見開いた。

「何を」
 眉を寄せて戸惑う飛鳥が愛らしいと静は思う。触れている部分から、自分の中の木気が飛鳥の中の火気へと変わっていくのを感じた。心地よい流れだ。

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