52 / 90
婚外交際
1
しおりを挟む艮宮に戻ると、土気で作った仮の根を封印し終わった寛麒が待っていた。四人もまた仮の根を封印し終わった廟を確認し、任務が終わったことを確認する。
静は寛麒にすぐにでも報告をしなければ、と思ったが、静の切り裂かれた着物を見るや、
「呪だね。何か不具合はあったかい?」
と尋ねてくる。
「呪により、皆とはぐれました。けれど、寛麒からお借りしていた鈴のおかげで、こうして戻ることができました」
「そうか。しかし傷跡が痛々しい。手当をしよう」
「この程度の傷ならば、大丈夫です。それよりも、詳しいご報告をしたいのですが」
と静は告げた。
「報告は楽しみだけれど。静龍、凄まじい木気だね。中宮に戻る前に、少し解放して来たらどうだろう?」と寛麒は、虎牙と話している飛鳥を横目に言う。
「そ、それはどのような意味でしょうか?」
「そのままの意味さ。飛鳥は、静龍が傷つけられたことに納得がいかないだろうね。私もまた納得は出来ない。ただ、飛鳥は静龍が鞘とならなければ、自ら裁こうとするかもしれないよ」
「それは困ります。まだ、仮説の段階ですが、少し見えてきたものがあるように思うのです」
「それは、後々聞かせてもらうとして。愛おしい人の心を救うのもまた、そなたの仕事だ」
「しかし、どのように?艮宮には様々な方がいらっしゃります」
「もっともな心配だね。艮宮南東の離れに結界を張っておこう。そこで話をすればよい」
と寛麒は言う。
「寛麒、私はあなたの」
「母上の気配がした。すべてを推し量ることはできないけれど、少しは分かるつもりだよ。ただ、今は、静龍が無事でよかった。それ以上のことは望まないさ」
そこまで話すと、寛麒は微笑み、行っておいで可愛い静龍、と言い送り出してくれる。
静は少しばかりの名残惜しさを感じながら、寛麒の元を離れ、飛鳥の元へ近づいていった。
「飛鳥」
と静が声をかけると、虎牙は静に目配せし、飛鳥の肩を叩き去って行こうとする。
「話の途中だったのではないの?」
と虎牙に声をかけるけれど、後ろ手に片手をあげて見せ、
「お前たちの艶にあてられてしまうから、ここは去るよ」
と言うのだった。
席を外してくれるのはいいが、一言余計だ、と静は思う。一方で飛鳥は神妙な顔で、
「静、話をしたい」
と言うのだった。寛麒に言われた通りに、
「艮宮の離れに行きましょう」
と静は言う。
5
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる