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鬼脈と呪術
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先に進んでいくと、鉱物の多い空間が出てくる。
緑石や水晶などが岩壁に現れてきて、キラキラときらめいていた。天然の鉱物は見事ではあるが、金の気がグッと高まるのを感じ、静は少し警戒してきてしまう。逆に虎牙や璃蛇にとっては、過ごしやすい空間のようだ。
「ここは少し難しいかもしれない」
と静が言えば、
「溶かしてしまうか?これだけの量だ。溶かしてしまえば、見事な宝石になる」
と飛鳥が何のことはない様子で言う。
「お前の火気をばらまいたら、ドロドロになってしまうだろうよ」
虎牙がそう言って鉱物を割れば、壁からぞろぞろと金鬼が出てくるのだった。
剛直な角を持ち、鎌のような武器を持つ鬼だ。静は蔦で絡めるとることは出来ても、とどめを刺すのは難しいと感じた。
「静、ここは任せて。下がっていてくれ」
と飛鳥が言うので、言葉に甘えることにする。
飛鳥は懐から先が複数に割れた鞭を取りだし、自らの手のひらから火気を放ち、炎を帯びさせた。まるで炎の尾のようになった鞭を、鬼へとふるい、その体を巻き取っていく。
極熱を帯びた火の帯が、鬼の身体をドロドロに溶かしていくのだった。虎牙がひゅうっと口笛を吹き、感心を示してみせる。
「同じ五行はやりにくい。だが、奴らが柔な金気ならば、こちらに分があるか」
と虎牙は剣をふるい、鬼の鎌を受けた。虎牙の剛毅な剣は、鎌を砕いていく。
加勢出来ない静はじりじりとその様を見守るしかないのだが、ふと気がついて、璃蛇がどうしているのか、と気にかかる。
後ろを振り返ると、璃蛇が地面に魔方陣を書いているのが見えた。その陣形は見覚えがなく、恐らくは玄毬の秘伝なのだろうと思う。
「璃蛇様?それは一体?」
と静が声をかけると、璃蛇は静の元へやって来る。
金の気が充溢している空間のせいだろうか。璃蛇の漆黒の髪や瞳は黒々と光っている。その肌は、まるで水に濡れているかのように、艶やかで艶めかしい。璃蛇は、水気の申し子なのだろう、と静が思っていると、
「本意ではありませんが、これも役目。すみません、静龍様」
と璃蛇が言う。何のことだか分からずにいた静の腕に、じりっと痛みが走った。
璃蛇の持つ細身の短刀が、静の着物の袖を切り裂いたのだ。黒い煙が立ち、皮膚に焼けるような痛みがやって来る。
呪だ、と思う。婚礼式の日に馬車で見たような黒い呪だ。
気づいたときには、足元から黒い煙が立ち上ってきて、静の身体に巻きついてきた。どこかに転送する魔方陣なのかもしれない。既に効果を発揮した魔方陣はその形を失っていた。
「なぜ?」
静の言葉に、飛鳥が振り返る。
「静!」
飛鳥が駆け寄り手を伸ばすが、届かない。
「気をつけて!」
静は声ではなく、木気に乗せてそう言った。静はそのまま黒い煙に巻かれ、その場から姿を消してしまう。
緑石や水晶などが岩壁に現れてきて、キラキラときらめいていた。天然の鉱物は見事ではあるが、金の気がグッと高まるのを感じ、静は少し警戒してきてしまう。逆に虎牙や璃蛇にとっては、過ごしやすい空間のようだ。
「ここは少し難しいかもしれない」
と静が言えば、
「溶かしてしまうか?これだけの量だ。溶かしてしまえば、見事な宝石になる」
と飛鳥が何のことはない様子で言う。
「お前の火気をばらまいたら、ドロドロになってしまうだろうよ」
虎牙がそう言って鉱物を割れば、壁からぞろぞろと金鬼が出てくるのだった。
剛直な角を持ち、鎌のような武器を持つ鬼だ。静は蔦で絡めるとることは出来ても、とどめを刺すのは難しいと感じた。
「静、ここは任せて。下がっていてくれ」
と飛鳥が言うので、言葉に甘えることにする。
飛鳥は懐から先が複数に割れた鞭を取りだし、自らの手のひらから火気を放ち、炎を帯びさせた。まるで炎の尾のようになった鞭を、鬼へとふるい、その体を巻き取っていく。
極熱を帯びた火の帯が、鬼の身体をドロドロに溶かしていくのだった。虎牙がひゅうっと口笛を吹き、感心を示してみせる。
「同じ五行はやりにくい。だが、奴らが柔な金気ならば、こちらに分があるか」
と虎牙は剣をふるい、鬼の鎌を受けた。虎牙の剛毅な剣は、鎌を砕いていく。
加勢出来ない静はじりじりとその様を見守るしかないのだが、ふと気がついて、璃蛇がどうしているのか、と気にかかる。
後ろを振り返ると、璃蛇が地面に魔方陣を書いているのが見えた。その陣形は見覚えがなく、恐らくは玄毬の秘伝なのだろうと思う。
「璃蛇様?それは一体?」
と静が声をかけると、璃蛇は静の元へやって来る。
金の気が充溢している空間のせいだろうか。璃蛇の漆黒の髪や瞳は黒々と光っている。その肌は、まるで水に濡れているかのように、艶やかで艶めかしい。璃蛇は、水気の申し子なのだろう、と静が思っていると、
「本意ではありませんが、これも役目。すみません、静龍様」
と璃蛇が言う。何のことだか分からずにいた静の腕に、じりっと痛みが走った。
璃蛇の持つ細身の短刀が、静の着物の袖を切り裂いたのだ。黒い煙が立ち、皮膚に焼けるような痛みがやって来る。
呪だ、と思う。婚礼式の日に馬車で見たような黒い呪だ。
気づいたときには、足元から黒い煙が立ち上ってきて、静の身体に巻きついてきた。どこかに転送する魔方陣なのかもしれない。既に効果を発揮した魔方陣はその形を失っていた。
「なぜ?」
静の言葉に、飛鳥が振り返る。
「静!」
飛鳥が駆け寄り手を伸ばすが、届かない。
「気をつけて!」
静は声ではなく、木気に乗せてそう言った。静はそのまま黒い煙に巻かれ、その場から姿を消してしまう。
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