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鬼脈と呪術

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 静たちは祠の中から、鬼脈に入っていく。
 乾燥した土気が強く、思わずむせ返りそうになった。
 入り口こそは、飛鳥や虎牙が背を屈めるほどだったが、中に進んでいけばいくほど、空間が広がっていき、見上げるほどの洞くつになっていく。

 中に行くと、水気が増えてきて、鍾乳洞のように反響する。天井から雫が降って来るのを防ぎながら進んでいくと、ひと際、水気が高まる瞬間があった。

「来る」
 と静が感じたのと同時に、他の三人も身構える。

 天井から落ちてくる雫が形を象っていき、大きな水かきを持つ水妖が数体現れてきた。ひたひたと水気を帯びている水妖は粘膜を吐き出してくる。

 静は指の先から蔦を伸ばし、水妖を絡めとった。静が絡めとった水妖の水気を吸っていくと、飛鳥は水気を失った水妖を炎の短刀で貫く。

 火の気で水分を蒸発させて消滅させていった。虎牙は細身の刀で、水妖を切り捨てていく。璃蛇は倒れた水妖に手のひらから蟲毒を浴びせ、消滅させる。そうしている間にすべての水妖を消し去ることが出来た。

「さすがだな、飛鳥に静。合わせ技が見事だ。それに璃蛇姫も不思議な力をお持ちだ」と虎牙が言う。
「いえ、私は」
 と璃蛇はおずおずと返事をする。しかし、静も想像していた以上に、璃蛇の反射神経は優れていた。

「璃蛇様、助かりました」
 と静が言うと、
「大したことではありません」と言い、璃蛇は恥ずかしそうに頷く。
 しかし、次から次へと水妖が現れ出てくるので、談笑をしている場合ではなくなってしまう。

「この空間ではオレは不利だな。湿気が強い」
「水気は私が吸う。飛鳥はとどめをお願い」
「分かった」

 静は両手のすべての指から蔦を出し、水妖の水気をどんどん吸い上げて、自分の気に還元していく。この場所は静が気を充溢させるのに十分だ。
 水気を失い、乾燥して来た水妖を飛鳥がことごとく焼き切っていく。けれど、普段の飛鳥から考えれば、火の気は少し足りない。あまりにも水気が高いためだろう。

「飛鳥、手を」と言い、静は飛鳥の手を取り、指を絡める。指と指に蔓を絡めれば葉が伸び、つぼみが出て花が咲く。
 静は自分の中から飛鳥へ気が流れ、火の気へと転化していくのを感じた。
「ありがとう、静」
「ええ」
 璃蛇はその姿を見て、口元を着物の袖で押さえる。

「静龍様は、寛麒様の奥方なのでは。なぜ、気のやり取りが可能なのですか?」
 と呟く声に、
「物事は多面的だ、璃蛇姫。婚外交際は理解できないかい?」
 虎牙は声をかけた。
「理解は不要です。まさか飛鳥様がそのような汚らわしいことを……」
 と璃蛇は首を横に振るい、言う。
「そう思うのは自由だが、真実はときに澱みを持っているものだ。そしてときに想像以上に美しいこともある」

 虎牙はそう言い、自らも水妖へ一撃を喰らわせるのだった。璃蛇は一度、自らの身体を抱きしめる。そして、手のひらから生成した蟲毒を水妖へとぶつけて、倒すのだった。しばらくして、気配がなくなったところで一行は、洞くつの先へと進んでいく。

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