40 / 90
鬼脈と呪術
3
しおりを挟む
静たちは祠の中から、鬼脈に入っていく。
乾燥した土気が強く、思わずむせ返りそうになった。
入り口こそは、飛鳥や虎牙が背を屈めるほどだったが、中に進んでいけばいくほど、空間が広がっていき、見上げるほどの洞くつになっていく。
中に行くと、水気が増えてきて、鍾乳洞のように反響する。天井から雫が降って来るのを防ぎながら進んでいくと、ひと際、水気が高まる瞬間があった。
「来る」
と静が感じたのと同時に、他の三人も身構える。
天井から落ちてくる雫が形を象っていき、大きな水かきを持つ水妖が数体現れてきた。ひたひたと水気を帯びている水妖は粘膜を吐き出してくる。
静は指の先から蔦を伸ばし、水妖を絡めとった。静が絡めとった水妖の水気を吸っていくと、飛鳥は水気を失った水妖を炎の短刀で貫く。
火の気で水分を蒸発させて消滅させていった。虎牙は細身の刀で、水妖を切り捨てていく。璃蛇は倒れた水妖に手のひらから蟲毒を浴びせ、消滅させる。そうしている間にすべての水妖を消し去ることが出来た。
「さすがだな、飛鳥に静。合わせ技が見事だ。それに璃蛇姫も不思議な力をお持ちだ」と虎牙が言う。
「いえ、私は」
と璃蛇はおずおずと返事をする。しかし、静も想像していた以上に、璃蛇の反射神経は優れていた。
「璃蛇様、助かりました」
と静が言うと、
「大したことではありません」と言い、璃蛇は恥ずかしそうに頷く。
しかし、次から次へと水妖が現れ出てくるので、談笑をしている場合ではなくなってしまう。
「この空間ではオレは不利だな。湿気が強い」
「水気は私が吸う。飛鳥はとどめをお願い」
「分かった」
静は両手のすべての指から蔦を出し、水妖の水気をどんどん吸い上げて、自分の気に還元していく。この場所は静が気を充溢させるのに十分だ。
水気を失い、乾燥して来た水妖を飛鳥がことごとく焼き切っていく。けれど、普段の飛鳥から考えれば、火の気は少し足りない。あまりにも水気が高いためだろう。
「飛鳥、手を」と言い、静は飛鳥の手を取り、指を絡める。指と指に蔓を絡めれば葉が伸び、つぼみが出て花が咲く。
静は自分の中から飛鳥へ気が流れ、火の気へと転化していくのを感じた。
「ありがとう、静」
「ええ」
璃蛇はその姿を見て、口元を着物の袖で押さえる。
「静龍様は、寛麒様の奥方なのでは。なぜ、気のやり取りが可能なのですか?」
と呟く声に、
「物事は多面的だ、璃蛇姫。婚外交際は理解できないかい?」
虎牙は声をかけた。
「理解は不要です。まさか飛鳥様がそのような汚らわしいことを……」
と璃蛇は首を横に振るい、言う。
「そう思うのは自由だが、真実はときに澱みを持っているものだ。そしてときに想像以上に美しいこともある」
虎牙はそう言い、自らも水妖へ一撃を喰らわせるのだった。璃蛇は一度、自らの身体を抱きしめる。そして、手のひらから生成した蟲毒を水妖へとぶつけて、倒すのだった。しばらくして、気配がなくなったところで一行は、洞くつの先へと進んでいく。
乾燥した土気が強く、思わずむせ返りそうになった。
入り口こそは、飛鳥や虎牙が背を屈めるほどだったが、中に進んでいけばいくほど、空間が広がっていき、見上げるほどの洞くつになっていく。
中に行くと、水気が増えてきて、鍾乳洞のように反響する。天井から雫が降って来るのを防ぎながら進んでいくと、ひと際、水気が高まる瞬間があった。
「来る」
と静が感じたのと同時に、他の三人も身構える。
天井から落ちてくる雫が形を象っていき、大きな水かきを持つ水妖が数体現れてきた。ひたひたと水気を帯びている水妖は粘膜を吐き出してくる。
静は指の先から蔦を伸ばし、水妖を絡めとった。静が絡めとった水妖の水気を吸っていくと、飛鳥は水気を失った水妖を炎の短刀で貫く。
火の気で水分を蒸発させて消滅させていった。虎牙は細身の刀で、水妖を切り捨てていく。璃蛇は倒れた水妖に手のひらから蟲毒を浴びせ、消滅させる。そうしている間にすべての水妖を消し去ることが出来た。
「さすがだな、飛鳥に静。合わせ技が見事だ。それに璃蛇姫も不思議な力をお持ちだ」と虎牙が言う。
「いえ、私は」
と璃蛇はおずおずと返事をする。しかし、静も想像していた以上に、璃蛇の反射神経は優れていた。
「璃蛇様、助かりました」
と静が言うと、
「大したことではありません」と言い、璃蛇は恥ずかしそうに頷く。
しかし、次から次へと水妖が現れ出てくるので、談笑をしている場合ではなくなってしまう。
「この空間ではオレは不利だな。湿気が強い」
「水気は私が吸う。飛鳥はとどめをお願い」
「分かった」
静は両手のすべての指から蔦を出し、水妖の水気をどんどん吸い上げて、自分の気に還元していく。この場所は静が気を充溢させるのに十分だ。
水気を失い、乾燥して来た水妖を飛鳥がことごとく焼き切っていく。けれど、普段の飛鳥から考えれば、火の気は少し足りない。あまりにも水気が高いためだろう。
「飛鳥、手を」と言い、静は飛鳥の手を取り、指を絡める。指と指に蔓を絡めれば葉が伸び、つぼみが出て花が咲く。
静は自分の中から飛鳥へ気が流れ、火の気へと転化していくのを感じた。
「ありがとう、静」
「ええ」
璃蛇はその姿を見て、口元を着物の袖で押さえる。
「静龍様は、寛麒様の奥方なのでは。なぜ、気のやり取りが可能なのですか?」
と呟く声に、
「物事は多面的だ、璃蛇姫。婚外交際は理解できないかい?」
虎牙は声をかけた。
「理解は不要です。まさか飛鳥様がそのような汚らわしいことを……」
と璃蛇は首を横に振るい、言う。
「そう思うのは自由だが、真実はときに澱みを持っているものだ。そしてときに想像以上に美しいこともある」
虎牙はそう言い、自らも水妖へ一撃を喰らわせるのだった。璃蛇は一度、自らの身体を抱きしめる。そして、手のひらから生成した蟲毒を水妖へとぶつけて、倒すのだった。しばらくして、気配がなくなったところで一行は、洞くつの先へと進んでいく。
2
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる