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次期当主格たち

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 麒鞠王の声がけにより、集会がはじまる。
 艮宮と坤宮の根が失われたことや、鬼脈が乱れていることなどを王が述べると、場内へざわめきが起こる。

「集まってもらったのはほかでもない。鬼脈を整えるための協力者を募りたいのだ。状況から鑑みるに、艮宮側と坤宮側と両方から、鬼脈を整える必要があるようだ。それぞれの宮へは寛麒、朗麒が参り、仮の根を封印する。その間、鬼脈内の魑魅魍魎を討伐する係が欲しいのだ。当然のごとく、神獣の加護を持つ者でなければ、太刀打ちは出来ないだろう。それ相応の武力ももちろん必要となる。現在ここに参じてくれた者のみならず、我こそはという者に行ってもらいたいのだ」

 当主やその息女達は、多くの場合神獣の加護を受けている。
 とはいえ、才能の出方はそれぞれ異なるため、同じ碧羅家の龍の加護を受けていても、劉龍や静龍のように武力に長けている者もいれば、李龍や桃龍のように、治癒や神域の清浄などに長けた者もいるのだ。

 静が名乗り出ようとしたとき、虎牙がスッと立ちあがるのが見えた。

「私が参ります。坤宮の根が失われたのに気がついたのは、私です。それに坤宮の現当主は、白露の関係筋です。ゆえに、白露の者が参らねばなりません」
「そうか、虎牙が行ってくれるならば心強い。乾宮の武闘大会での健闘は聞き及んでおる」
 静もその流れで立ちあがる。

「私も参ります」
 その様子に場内がざわめくのは、麒鞠の次期王后だと認識されているからなのだろう。
「静龍。寛麒の妻であるそなたが参るとなれば、驚く者も多いかと思うが」
「寛麒様が根を封印なされるとなれば、私も協力せねばなりません。鬼脈内に興味があるのも事実です。ぜひ参らせてください」
「静龍ならば、武力は申し分ないだろう。しかし、どうだろうか?」
 麒鞠王は寛麒や朗麒の方をうかがう。

「私は静龍の意向を尊重します」と寛麒は言い、朗麒は、
「兄上はそう申しておりますが、私からすれば懸念点はあります。鬼脈がどのような場所か、分かりませんので」と言うのだった。
「では、静龍行ってくれるか?」
 と麒鞠王に言われ、
「ぜひ参らせていただきます」
 と静は答えた。
 不意に静は頬へ熱風を感じ、その瞬間に、寛麒が呟く。

「さあ、来るね」と。
 静は何のことか分からずにいたが、
「私も参ります」
 熱気が放たれ、静は思わず目をつぶった。

「紗紅那の飛鳥か。その熱を帯びた覇気は、やる気の表れととって良いのか?」と麒鞠王が言う。見れば、飛鳥の着物の裾が揺れていた。裾から立ち上る火の気が見える。
「そうとっていただいて、良いかと思います。王、私も参ります」
「理由はあるか?」

「坤宮は我が紗紅那と白露の管理下にある点や、紗紅那から参加させていただくのであれば、私が適任かと思う点など、様々ありますが。いずれも些末なこと。私も参加させていただきたい、それ自体が理由です」
 熱風は静に向かって吹き抜ける。

「まさか飛鳥、怒っている?」
 そんな風に静は感じたが、
「燃やされかねないな」
 と言う寛麒もまた、同様のことを感じたようだ。

「中々に熱い男だな。意図は分からなくもないが、皆まで言うまい。では飛鳥、そなたも参加してくれ」
「はい」

 そう言った飛鳥の視線がこちらに向くのを感じ、静の心音は跳ねあがる。視線を逸らすことが出来ずに、そのまま数秒見つめ合ってしまう。距離こそ離れているが、自分の木の気が飛鳥へと流れ出ていくのを感じた。そして、いよいよまずい、と思った静は、なんとか視線を振り切るのだった。

 その後、劉龍と、瑠亀、璃蛇が名乗り出る。
 静の兄・劉龍は、
「現在麒鞠家と碧羅は30年運の縁。静龍を受け入れていただいた縁もありますし、碧羅より馳せ参じないわけには参りません」と言い、瑠亀、璃蛇は、
「我らは武力での冴えはありませんが、霊力、呪力ではお役に立てるかと思います」
 と言い名乗り出た。

 その後麗虎が直々に参じると言いはじめ、虎煌と言い合いになってしまう。麗虎、劉龍、瑠亀は坤宮よりの鬼脈と担当し、虎牙、飛鳥、璃蛇、そして静が艮宮よりの鬼脈を担当することとなった。
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