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次期当主格たち
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しおりを挟む麒鞠の席に行くと、「秘密を持つというのは、難儀だね」と寛麒が言う。
「仕方ありません」
飛鳥の隣にいる璃蛇の存在を目の端に置き、静は言った。
「しかし、なぜ晶亀殿は璃蛇姫を同席させたのだろうね?璃蛇姫に関しては、武力で見れば、そなたの姉君や妹君とも同程度であるとは思うが」
「縁談の相談ではないでしょうか。坎宮と離宮では交流がさほどありません、このような機会に、飛鳥と姫君を相まみえさせたい、といった意図があるのやもしれません」
静がとつとつと語るのを、寛麒は驚きの眼差してみてくる。
「なるほど。飛鳥のこととなると、勘が鋭いのだね」
「飛鳥は姫君から人気が高いのです。あの容姿と真摯な振る舞いゆえに、好まれやすいのかと思います」
目を引く緋色の髪や瞳、陽光を思わせる温かな振る舞い。静にとっても、飛鳥は好ましい存在だ。
「随分と冷静だね。心配にはならないのかい?」
「私自身が何者にも縛られぬ、自由を好む性質です。それでいて飛鳥を縛っておくのはおかしな話。それに、たおやかな姫君と私が優美さで闘ったとて、たかが知れております。飛鳥に縁組の話が出たとなれば、やはり、心は揺れるでしょうけれど」
「私はたった今、飛鳥の気持ちが分かったよ。自分の気持ちに気づいたならば、その瞬間から、そなたをすぐにでもものにしたい、籠の中に入れておきたいと思っただろう」
「な、なにをおっしゃられるのです?」
「どこに行くか分からぬ、どこにも留まらぬよりは、女人同士でいがみ合ってくれたり、きつく束縛されたりする方が安心するものだよ」
「いがみ合う理由がありません。私と姫君達とでは、興味関心の向かう場所が違います。姫君達の優美さや柔和な所作は私ですら、美しいと思いますし。護らねばならないと思っております」
「そなたは、少年のように素直な性質のようだ。だからこそ、飛鳥は常にヒヤヒヤしてそなたを見守るほかない。今もまた、私とそなたが何を話しているのか、気になって仕方がないことだろう」
「そうなのでしょうか」
「それに、先ほど言った飛鳥が姫君の間で人気であるならば。王子達の間で人気なのは、静龍そなただと知っていたか?」
「また、いつものお戯れを」
「この頃は、中宮までやって来て、そなたと手合わせをしたいと言ってくる者が後を絶たないだろう?あわよくば婚外交際へと持ち込めないか、と思っているのだろうね。美しく強いそなたに惹かれる者は多いようだ」
「手合わせに興味はありますが、その他の点には興味はありません」
「それでこそ静龍だね。おや、そろそろ始まりそうだ」
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