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次期当主格たち
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しおりを挟む「息災か?」
と聞く飛鳥とは数日前に会っていた。
「ええ。飛鳥も息災そうでなにより」
と静は答えるけれど、言葉の調子や視線で周りに気づかれてはいないか、と肝を冷やす。
「妙にぎこちないな」
と虎牙が呟いた。
「麒鞠の次期王后様ですもの。そう馴れ馴れしくお話しをするわけにはまいりませんわ」
と璃蛇が言う。
「ああ、璃蛇姫はご存じないのか。この二人はかねてより深い仲なのだ。麒鞠と碧羅の縁による先日の婚姻よりも、もっと前から」
虎牙の言葉に、璃蛇がハッと息を飲むのを感じた。静と飛鳥は瞬時に目を見合わせる。
「虎牙め、余計なことを」と静は思う。とはいえ、ここであえて暴露することではない、と諫めるのもおかしな話だ。
「それはつまり、飛鳥様は恋に破れてしまったということですか?」
と璃蛇は言う。問われた飛鳥は、すっかり困りきった顔をしていた。けれど、ここは穏便におさめておくのが良い、と思ったようで、
「言い様によっては。たしかに、そうかもしれない」
と答える。虎牙は目を丸くして、
「破れた?そんなことがあるものか」
と水を差すが、璃蛇は「そうなのですね。お慕い申し上げていたお相手との婚姻が叶わないとは、とてもお気の毒だと思います」と納得していた。
色恋に鈍い静ではあるが、璃蛇はどうも飛鳥に好意があるようだ、と感じる。飛鳥へ話しかけるときだけ、声の調子が上がるためだ。素直で愛嬌のある可愛らしい人だ、と静は思う。
璃蛇ならば、何の障害もなく飛鳥と婚姻関係を結べるだろう。水剋火の関係であるとはいえ、血気盛んな陽火を鎮める、雨水。
その程度の剋ならば、飛鳥にとってはなんのことはないはずだ。口外出来ない関係よりも、よっぽど健全だ、と静は思う。
そう思うと、胸の奥がじりじりと痛む。麒鞠家の席で寛麒が手招きをするのを見て、静は、
「それでは失礼いたします」
と言ってその場を離れることにする。
飛鳥が動こうとしたのが分かったけれど、静は首を振り、その場を離れた。公式には触れあえない、口外できない、分かってはいたものの、胸が痛む。
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