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次期当主格たち
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しおりを挟む「なるほど、この中では私が適任かもしれませんね?」
思いのままに発した静の言葉に、朗麒が激しく反応する。
「女人に行かせるわけにはまいりません。ましてや、静龍様は兄上の奥方であり、麒鞠次期王后であられます。そのような方に、危険極まりない鬼脈へ行かせるなど」
口数少ない印象があったが、今こうして静をかばっているのを見る限り、静を忌避しているわけではないようだった。
しかし、「ありがとうございます、朗麒様」と静が言えば、朗麒はばっと顔をそむけてしまう。
「朗麒、お主は静龍の武力を知っておらんだろう?母上や楊麟、親戚筋の女人から、静龍の力をはかるのは、静龍にとっては不本意であろう。静龍は寛麒との縁談がなければ、次期巽宮当主と目されていた器だ」
「恐れ多きお言葉です。ただ、朗麒様、たおやかさや詩歌の才のかわりに、私には武力があるのはたしかです。しかし朗麒様、ご心配いただきありがとうございます」
「朗麒。静龍のことは、もう少し気軽に、同門の兄弟と考えては?」
と寛麒が言い添える。
「中々難儀なことをおっしゃられる。兄上はよいのですか?奥方を危険な目に合わせるやもしれません」
「奥方と言う言葉が静龍に合っているのだろうか。勿論危険な目に合わせたくはないけれど、中宮にこもらせておくのが、果たして静龍にとって最善なのかは私には判断がつかない」
「話が盛り上げっているところで悪いが、静龍に任せるとは限らない。五家を集めるつもりだ。その中で動く者を決めたい」
と麒鞠王が言う。静は自分の心臓がドクッと強く脈打つのを感じた。五家を集めるとなれば、当主は勿論、次期当主たちも呼ばれるだろう。
静の様子に気づいた隣の寛麒が面白がって、
「勿論、紗紅那も」
と呟くので、静は気が気ではない。
「私も動きたいところではあるが、中宮を空にするわけにもいくまい。他の四家の協力を仰ぐことにしよう」と言う。
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