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次期当主格たち
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しおりを挟む虎牙の言っていた通り、艮宮に異変が起こりはじめたのは、静が坤宮に行って数日後のことだった。
艮宮から坤宮にかけての気脈が乱れているとの報告が上がっている。
艮宮から坤宮の気脈はとりわけ重視されている脈で、麒鞠のみならず、他の四家にとっても重要な脈だ。中宮には艮宮と坤宮それぞれの方向に、鬼門堂があり、気の流れを管理している。
この気脈は、通称「鬼脈(きみゃく)」とも呼ばれており、根の国との関連が深い。根の国の鬼神や魑魅魍魎の通り道となっていたことも、古来ではあるようだ。ゆえに、重要視されているのだ。
麒鞠王により招集をかけられて、緊急の会議が行われる。
本来ならば姫や后格の女性は同席しないその場に、静は呼ばれていた。そして静は寛麒の隣の座すのだが、麒鞠王からは、
「静龍。本来ならば、女人や后格の者はこの会議への同席は行わない。しかしそなたは、ややもすれば中宮のどの兵や、あるいは我が息子たちよりも武が立つようだ。ゆえに同席してもらった」
と声がかかる。
「承知しております。私の本分はこちら側ゆえ。碧羅でも、兄と共に同席しておりました」
と静は言う。
詩歌や舞踏への才はまったくだが、武術だけには絶対の自信があった。静は自分でも自分は巽宮当主になると思っていたし、周りの者もそう思っていたのだ。
「良い妻を得たな寛麒。ここまでの者は、五家の中でも、中々おるまい」
「そう思います」
寛麒が言うが、隣席の朗麒が「本題に入りましょう」と促す。この朗麒は寛麒と相対するほどに、口数が少ない。静も挨拶程度でしか、言葉を交わしたことがない。
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