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共寝の提案

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「私たちが寝屋を共にしていないと侍従たちがもらしたようだ。私が東堂にいることは平常ではあるけれど、初夜以降はめっきり触れあっていない、と父上に進言したようでね。碧羅の姫はそれほどまでに組み敷くのが難儀か、と聞かれた」
「な、なんとお答えになったのです」

「簡単に組み敷ける姫など、興味はありません、とは言った。けれど。周囲の目を欺くのは、中々難しいものだね。そういうわけで今宵から、寝屋を共にしたいのだけれど」
「と、共に?」
「飛鳥には恨まれそうだが、当面は円満な様を見せておかなければいけない」

「私は、その。本当に難儀なのです。分かってはいても、組み敷かれるとなれば、闘争心が邪魔をします。恐らく寛麒は傷だらけになるかと」
「ハハハハ!何を、告白しているんだい?」
 と寛麒は笑う。ただ静からすれば笑い事ではない。
「で、ですから!やめておいた方が懸命です」

「たしかに静龍の媚態には興味があるけれど、人の姿での交わりを行おうとは思ってはいないよ」
「し、しかし、寝屋を共にとおっしゃりました」

「興に乗ったがために、飛鳥を敵に回すのは本意ではない。紗紅那の炎は中々に恐ろしいものだ。寝物語をしよう」
「寝物語ですか?」
「子どもが寝る前に母や乳母にねだるような寝物語だよ。私は母上と共に眠ったことがない。麒鞠の子どもは病弱がゆえに、封印の中で、神獣の化身と共に育つ。私は寝物語を聞いたことがないのだ」

「そうなのですね、初めて聞きました」
「静龍の知っている寝物語を教えて欲しいのだ。私も書物を紐解いて物語を探してみる。話をしながら、共に眠ろう。私は男女の機微以上に、子ども心を躍らせるような児戯を求めているのだよ」

「それならば、母上や乳母から聞いた話があります。それに、碧羅には代々語り継がれている話がありますので、お話しできれば良いかと思います」
「それは楽しみだ」
 と言って寛麒は笑う。

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