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失われた根
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しおりを挟む静の中に一つの違和感が生まれた。
土の気は、金の気に流れやすい。つまり、土の気が、何かのきっかけにより、金の気へと変質してしまった可能性がある。
金の気を司るのは、白露であり、麗虎や虎煌だ。
根を失ったから、土の気が流れ出した?
静は一つの仮説を思い浮かべたが、根拠がない。それに坤宮の土の気は、紗紅那から火の気の加護を受けており、そう簡単に枯渇するとは思えないのだ。
「土の気がもれるのは、金の気へ。つまり、怪しいのは我らが白露ですね」
と双子は同時に言う。
とても弾んだ声音だったので、静は驚きを隠せない。
「証拠があるわけではありませんし、そのような発言をするつもりはありませんよ」
と静は諫めるのだけれど、
「静龍様、母様は伯父様と闘うつもりですし、お兄様も何やら動いております。怪しいと睨んでいます」
と二人は言うのだった。母様というのは、麗虎で、伯父様と言うのは虎煌のことだろう。
「お兄様というのは、虎牙様のことですか?」
「虎牙とお呼びいただいてよいのですよ。飛鳥様とともに、静龍様はお兄様とご年齢も近く、懇意にしていただいているご様子」
虎牙も飛鳥と同様、昔馴染みではある。ただ、虎牙は何事にも一言多く、静からすれば口うるさい人物なのだ。それに虎牙に双子の従妹がいるとは、静は初めて知った。
「虎牙がやましいことをするとは思えませんが」
「では、虎雨お兄様は?どうでしょうか」
「虎雨様にはお目にかかったことがありません」
虎牙には兄がいるとは聞いていたが、直接相まみえたことはない。
「それに、まだ証拠も何もない状態です。私が下手な発言をすることで、波紋を広げては困ります」
「静龍様は、血気盛んだというお話ですが、中々どうして冷静ですね」
「そ、そのお話はどこから」
「お兄様ですわ」
「虎牙ですか。私もいつまでも子どものように、頭に血が上りやすいわけでは……」
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