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神獣たちの初夜
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しおりを挟む静は寝所を出てから、東本殿の回廊を抜け、広場に出た。
殿中では侍従や侍女に声をかけられることはあったものの、活発な后であるとの事前通達のおかげか、「夜風を浴びてきます」の一言で理解された。
広場から角楼を見やる。
朱塗りの柱や欄干に碧色で模様が施されている美しい楼閣だ。
欄干の向こうに孔雀の模様のような模様を持つ尾が見え、静は鼓動がはねた。急いで楼閣をのぼる。櫓までたどり着いたところで、熱を感じた。寛麒の言う火の気だと気づいたときには、強い力でその腕に抱かれていた。
「静!」
「飛鳥、なぜ?」
飛鳥は人の姿に戻っており、紗紅那の正装を身につけている。
「木の気が高まるのを感じた。来ると思った」
「どうして、ここに?」
「婚礼の初夜を想像しない者はいないさ。覚悟の上とは言え、静が他の者の腕に抱かれると思うと、耐えがたかった。そう思ったらここへ飛んでいたんだ」
「けれど、中宮には結界があるのでは?」
「なぜか、東から南東、南の三方向のみ、土の気が薄かった。もっとも、感知されているかもしれないけれど」
寛麒が封印を緩めていたのでは?と静は思う。
「静、問いたくはないが、その」飛鳥は静を真っすぐ見すえながらも、言いよどむ。言いたいことは分かった。
「寝屋のこと?」
静もまた冷静なつもりが、言葉に出したとたんに頬が紅潮してくるのが分かる。飛鳥の目に火がともるのが分かった。火の気が高まり、静は自分の中の気がどんどん流れだしていくのを感じる。どう説明をすればいいのか、静は迷った。
だが、このままでは飛鳥は寛麒の言うように、すべてを燃やし尽くさんばかりの気を放っているのだ。
「児戯のような偽物の遊びをしたきりで、なにも」
「世には児戯に紛れさせた、卑猥な戯れもある」
飛鳥の言葉には焦りや怒りが含まれている。これでは、埒があかない。
「飛鳥。私の中に土の気が交じっているのかどうかは、飛鳥ならば感じられるはず」
契りを交わした者同士であれば、気の感知が出来る。とりわけ、五家の者同士は互いに強い気を持っているため、交流があれば痕跡が残るものだ。
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