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麒鞠と碧羅の婚礼式
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王冠の飾りや衣装のひだが揺れ、静の周りには風が起こる。寛麒が手をかざし、風を掴んで、祭壇の壺に向かって放った。
壺が割れて蘭の花弁が四方八方へ飛び散り、庭園を舞う。歓声が飛び交い、静たちの演舞は終了した。
麒鞠との婚礼式には本来適切な手順や、慣例はほとんどない。ただ、それぞれの現当主が神獣への変化により、場を盛り上げることだけが順守されていた。
今もまた、麒鞠家の王・壮麒は地上にて大地創世の演舞を、碧羅家の当主・邦龍が上空にて風雷の演舞を演じている。
祭壇の残った二つの壺に、大地の揺れと稲妻によりヒビが入った。緑葉と黄金の砂塵が舞い散り、拍手喝采が巻き起こる。これにより、現当主たちの演舞も終了となった。
「姫君、お手を」
と言い寛麒が手を差し出してきたので、静はしぶしぶ手を重ね、祭壇への階段を登っていく。
静は寛麒に手を引かれながら、五色の絨毯や房飾りで飾られた祭壇の階段を上りきった。寛麒は割れた壺の中央にある丹塗りの供物台の神酒を手に取って、祭壇下へ向けてまいた。静は寛麒に促されて、供物台の碧色の腕輪を手に取る。
碧羅の腕輪を麒鞠に、麒鞠の腕輪を碧羅に渡すのがこの儀式の一番の見せ場だ。この腕輪を交換してしまえば、静は麒鞠の后になる。ここまで来てしまえば、もはや逃げられないのは分かっていた。けれど、眼下に遠く臨む緋色の髪、緋装束の男のことを思うと、身体が上手く動かないのだ。きっと飛鳥はこちらを真っすぐに見つめているに違いない、と思った。
「静龍、腕輪を手に。そして袖へ滑らせて」
と隣の寛麒が静にだけ聞こえる囁き声で言う。静は思わず寛麒を見上げるが、寛麒は首を横に振り、知らぬふりをせよと示してみせた。
「装束の袖の内側にある輪を、私につけて」と言う。婚礼衣装の袖にはたしかに輪がくくりつけられていた。静は言われるがままに、碧色の腕輪を袖に滑らせて、袖の内側にくくられていた腕輪を、寛麒の腕へつける。寛麒は頷いて、自らも供物台の腕輪を取り、同じような手順で袖口の腕輪を静の腕につけた。
寛麒は静の手を取り、眼下の者たちに見えるように腕を掲げる。碧色の宝玉と、黄金の宝玉が陽の光りにきらめき、割れるような歓声が生まれた。静は寛麒の顔を見る。寛麒は片目を閉じて見せた。邦龍が尾を振れば庭園に花が散り、麒麟が尾を振れば金粉が散る。参列者の拍手に包まれ、婚姻式は閉会となったのだ。
寛麒とともに祭壇を下り、退場する中、静の頭の中には疑問符ばかりが浮かんでいた。庭園を抜け花飾りの馬車に乗る。中宮の神殿へ向かうのだ。寛麒は静を抱きかかえ、馬車に乗せた。本来ならば自分で乗れる、とつっぱねるところだったけれど、今は疑問で頭を支配されていたため、なされるがままだ。
壺が割れて蘭の花弁が四方八方へ飛び散り、庭園を舞う。歓声が飛び交い、静たちの演舞は終了した。
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今もまた、麒鞠家の王・壮麒は地上にて大地創世の演舞を、碧羅家の当主・邦龍が上空にて風雷の演舞を演じている。
祭壇の残った二つの壺に、大地の揺れと稲妻によりヒビが入った。緑葉と黄金の砂塵が舞い散り、拍手喝采が巻き起こる。これにより、現当主たちの演舞も終了となった。
「姫君、お手を」
と言い寛麒が手を差し出してきたので、静はしぶしぶ手を重ね、祭壇への階段を登っていく。
静は寛麒に手を引かれながら、五色の絨毯や房飾りで飾られた祭壇の階段を上りきった。寛麒は割れた壺の中央にある丹塗りの供物台の神酒を手に取って、祭壇下へ向けてまいた。静は寛麒に促されて、供物台の碧色の腕輪を手に取る。
碧羅の腕輪を麒鞠に、麒鞠の腕輪を碧羅に渡すのがこの儀式の一番の見せ場だ。この腕輪を交換してしまえば、静は麒鞠の后になる。ここまで来てしまえば、もはや逃げられないのは分かっていた。けれど、眼下に遠く臨む緋色の髪、緋装束の男のことを思うと、身体が上手く動かないのだ。きっと飛鳥はこちらを真っすぐに見つめているに違いない、と思った。
「静龍、腕輪を手に。そして袖へ滑らせて」
と隣の寛麒が静にだけ聞こえる囁き声で言う。静は思わず寛麒を見上げるが、寛麒は首を横に振り、知らぬふりをせよと示してみせた。
「装束の袖の内側にある輪を、私につけて」と言う。婚礼衣装の袖にはたしかに輪がくくりつけられていた。静は言われるがままに、碧色の腕輪を袖に滑らせて、袖の内側にくくられていた腕輪を、寛麒の腕へつける。寛麒は頷いて、自らも供物台の腕輪を取り、同じような手順で袖口の腕輪を静の腕につけた。
寛麒は静の手を取り、眼下の者たちに見えるように腕を掲げる。碧色の宝玉と、黄金の宝玉が陽の光りにきらめき、割れるような歓声が生まれた。静は寛麒の顔を見る。寛麒は片目を閉じて見せた。邦龍が尾を振れば庭園に花が散り、麒麟が尾を振れば金粉が散る。参列者の拍手に包まれ、婚姻式は閉会となったのだ。
寛麒とともに祭壇を下り、退場する中、静の頭の中には疑問符ばかりが浮かんでいた。庭園を抜け花飾りの馬車に乗る。中宮の神殿へ向かうのだ。寛麒は静を抱きかかえ、馬車に乗せた。本来ならば自分で乗れる、とつっぱねるところだったけれど、今は疑問で頭を支配されていたため、なされるがままだ。
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