神獣たちの戯れ・碧羅姫と麒鞠王子の縁組~婚外交際のすすめ~

KUMANOMORI(くまのもり)

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不本意な縁組

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 神獣が治める神域は、人々にとって政治や文化の中心である。

 神獣たちは五家の家からなり、それぞれ木火土金水の五行を司っているのだ。五家の生まれた者たちは、神獣の加護を受けて神獣の力を手に入れることで、神域を治めていた。
 八つの方位を統べる宮を管理し、中宮を中心とする神域を護るのが、五家の役割となっているのだ。

 土気を司る麒鞠(きまり)を王にすえた、碧羅(へきら)、紗紅那(しゃくな)、白露(はくろ)、玄毬(げんく)の四家は、麒鞠との婚姻関係を結び、各家の弥栄を盤石のものにするのが慣習だ。

 麒鞠家は、およそ三十年ごとに、順番に各家の者と婚姻関係を結ぶこととなっている。
 今は木気を司る、碧羅家が麒鞠家との婚姻を結ぶまわりとなっていた――――


 ※


「破談にしてください!絶対にお断りを!さもなくば、碧羅から私を勘当してくださっても結構です。この縁談だけは絶対に飲めません!」

 碧羅(へきら)家の大広間に、二女である静龍(せいりゅう:以下静)の声が響き渡る。静自身は戸惑いをそのまま言葉にしているものの、戸惑いは周りの者にも伝播していた。

 その場に控えていた長兄や姉や妹、母また戸惑いの色を隠せない。もっと言えば、この縁談を告げた邦龍(ほうりゅう)自身も、麒鞠(きまり)家の王子からの持ちかけ話を消化しきれていないのが正直なところだった。

「静。お前の驚きは分かる。かく言う俺自身も、この縁組には驚いているのだ。麒鞠との縁組があるとすれば、李か桃かと思っていた。お前はその……」
「難が多い。母上似の顔も、難ですべて覆い隠してしまう。そうですよね?」

 静は父に釘をさす。口が悪い、態度が悪い、男のように色を面白がる、美貌が覆い隠されるほどの女だ、と言われてきた。とはいえ常々言われてきたことを、静は特段気にしてはいない。

 碧羅家の美しい三姉妹の中でも静はとりわけ気が強く、聞きわけが悪いじゃじゃ馬娘として知られている。男連中と色町に繰り出したり、他家の男たちと好んで決闘をしたりなど、おさまりがきかないのだった。

 知に長けたたおやかな李龍(りりゅう)や舞踏に長けた優美な桃龍(とうりゅう)とは質を異にしていたので、縁組ではなく、碧羅家の跡取りとして長兄とともに期待されていたのだ。
 長兄、劉龍(りゅうりゅう)が震宮(しんきゅう)の当主を継ぐならば、震宮当主と双曲を成す巽宮(そんきゅう)当主となるのは静龍である。と誰もが思っていた。

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