第十王子との人違い一夜により、へっぽこ近衛兵は十夜目で王妃になりました。

KUMANOMORI(くまのもり)

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北方の地へ

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 おじい様は、ウィリエール様と同じサファイアブルーの瞳をお持ちの、獅子だ。
 漆黒の毛並みを持ち、目だけが青々と輝いている。

「僕が生まれたのはあの国だよ。もちろん、王様になりたいわけじゃないけど、仕方ないんだ。そうしなければ、僕の望みは叶わないから」

「私が力を注ぎます。ウィリエール様がケセラスルン国でお暮しになることを、望むならば」
 私はそう言い添える。

「そなたは、また面妖な気配を持っているな」
 おじい様の視線が自分に注がれることに、少しばかり緊張が走った。

「軍神の巫女の家系に育っております。私が必ずお守りいたします」
 私は胸に手を当てる。

「私の主はウィリエール様お一人です」
 ミリア、ありがとう、とおっしゃるウィリエール様の瞳の色は赤い。おじい様が首をかしげ、控えている骸骨の兵士たちが剣を構える。

「お初にお目にかかります。ウィリエールのおじい様。私はウィリエールの兄、キリムドです」
「キリムド?」

「はい。私はウィリエールとは父を同じくしております。私は単なる人の子ですが、こうしてウィリエールの身体に宿らせてもらっております。こうして、交代で受け持てば問題はないでしょう」

 キリムド様がウィリエール様にとってかわったことで、おじい様にはご理解いただけたようだ。

 しばし、治世に関しての意見交換をなさったあとで、ウィリエール様のおじい様は了承してくださった。
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