第十王子との人違い一夜により、へっぽこ近衛兵は十夜目で王妃になりました。

KUMANOMORI(くまのもり)

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嫉妬心

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「何をしたっ!?」
 熱のこもった瞳が求めているのは、この事象への説明だ。

 私にも何が起こったのかは分からない。たしかなのは、私の中にはウィリエール様とヴィルヘルム様の力が送り込まれているこということだ。

 私が望んだわけではないけれど、自動的に何かの力が引きだされている可能性が高い。

「私も分かりません。ただ……」
 エルドナード様の腕の中に抱かれるレイナード様はもはや虫の息だ。

「レイナード様のお手当てが先かと思います」

 エルドナード様は首を横に振る。
 喘ぐような声をあげ、
「お前がやったんだろっ」
 とおっしゃる。

 そうかもしれないし、違うかもしれない。正しいことは分からないけれど、エルドナード様からすれば、目の前の事象を私の仕業にするのが一番スムーズなのだろう。

 エルドナード様の両手が私の首を掴みにかかってきた。喉を絞めて絞殺しようとするのか、あるいは単なる脅しなのか。
 判断する前に危険を察する。私のではなく、エルドナード様の、危険だ。

 ぐいぐいと爪の先が喉の皮膚に食い込む。力強く押しこまれて血管が押しつぶされて、気道が狭くなっていく。呼吸ができなくなった。血液の流れが封じされたことで、こめかみや眼球に血液が集まる。

 声にならない声をあげたときに、エルドナード様の額に鋼の剣が突き刺さるのを見た。

 吸ったままの息をそのまま留め、心臓は激しく飛び跳ねるのを感じる。エルドナード様は瞳孔を開いた状態で、蝋人形のように静止していた。いやな予感がしたときには、剣がずるりと引き抜かれ額から血しぶきがあがる。

 ああっ、とため息とも悲鳴ともつかない声が出て、私は目を覆う。

「誰かっ!」
 焦りと恐怖の入り混じった声はまるで悲鳴のようだ。私は人を呼びながら、この状況を頭の中で整理しようと試みる。

 ――――これは、ウィリエール様のお力?それともヴィルヘルム様のお力なの?

 私の裸の胸や腹部、大腿部は血を浴びて、赤く染まっている。この状況に取り調べを入られたら、どう裁かれるだろうか?
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