第十王子との人違い一夜により、へっぽこ近衛兵は十夜目で王妃になりました。

近衛兵の変死

2

　遺体は、ランドルフ様、リドムンド様それぞれの王子が最も信頼していた兵だった。

「ランドルフ様とリドムンド様は、シュルリアン公国へと視察に行っておられた。この二人も帯同していたらしい。帰国後に屯所に戻った後で亡くなったようだ」

　ヴィルヘルム様がそう説明してくださった。部屋から運び出されて、屯所の隅で刑務官がやって来て検分を行っているそばから、私は遺体を見る。

　二人の頭の辺りにふわふわと浮かぶ湯気のようなものを見つけた。

「その湯気のようなものは一体なんでしょうか？」
　私はヴィルヘルム様に尋ねてみる。

「湯気がどこにあるんだ？」
　ヴィルヘルム様は一通り辺りを見回した後で、私の顔をうかがって来た。

「頭の辺りに、何やら見えたような気もしたのですが」

　私だけに見えているの？だとすれば妙な発言をして、刑務官に疑われても困る。

「疲れているんじゃないか？この頃は立て続けに異変が起こっているから」

　ヴィルヘルム様は労し気に私の顔を見るので、そうかもしれません、と締めくくった。けれど、湯気は相変わらず見えている。