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童貞信仰
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しおりを挟む「ね、君の初体験。私でいっぱいにして?」
誰もいなくなったサークルの空き部屋で、初めてだという後輩にのしかかり、初めてをもらう手はずだ。
椅子の上で「あ、やばいかもっす」と言って腰を浮かす後輩の反応が可愛い。
この頃は初めてだという相手ばかりを選んでしまう。
「瀬尾さん、胸あたる」
シャツ越しの彼の胸板に、自分の胸を重ねたら、余裕のなさそうな吐息で返ってくる。きゅん、と腿の奥がふるえて、あ、ヤバぁいと思った。
「うん、しよ」
思っていたよりも大きく隆起しているボトムスの前に手をかけて、チャックを下ろす。
直角になっているそれに口を近づけようとしたら、
「やりすぎぃーAVかよぉー」
とドアの方から声がした。
振り返れば、個人的に会いたくない男年間ランキング一位の、速水がいる。
「人のオンナに手ぇ出して、ただですむと思うなよ?」
どこかから借りてきたセリフを言う速水には、
「あんたのオンナだった過去はない、今もなければ、未来永劫ない!」
と返して、シッシッと手を振った。
慌てた後輩は、チャックをあげてボトムスを閉じた。
「え、なんで」
「速水さんの彼女だって知らなくて、ごめんなさい!」
と頭を深々とさげて、身体をはなした。
「え、違うよ?彼女だったことないし、なんなら何の関係もないし!」
「無理っす、速水さんのあとは」
と言って、逃げるように去っていく。体育会系のノリが未だ残る、謎の男社会?調子に乗ったインフルエンサーもどきの速水は後輩に恐れられている。
臨戦態勢で、スカートのポケットから手元にたぐりよせていたゴムをポケット奥深くに隠す。
「童貞食いの瀬尾さぁーん、今日は不漁っすねぇ」
ニタニタ笑いながら、速水が隣の椅子に座ってきた。足を閉じ胸元のボタンを止める。はぁ~とため息が出た。
「邪魔しないでよー!この前そっちが彼女じゃない子といたときにはスルーしてあげたじゃん……。見て見ぬふりしてあげたのに!」
「こっちもさ、後輩くんに助け舟だしてやろうかと思っただけ」
「はぁ?」
「一回やるとさ、自己肯定感あがるから他でもモテる気するかもしんないけど……まやかしだからって。童貞好きでのしかかってくれる巨乳なかなかいねぇからって世知辛さを教えとこうかと」
「いいじゃん、可愛いんだもん。恥ずかしそうにするのがいいんだもん!」
「フラレてんじゃん、何人もの童貞たちに」
「う、うるさいなぁ……!」
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