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似たもの同士

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 最近のランスは出会った頃にまとっていた陰鬱な雰囲気が和らいでいた。
 ランスが馬車を出してくれたり、馬に乗せてくれたりと足を用意してくれて出かける。趣味友達のような健やかな関係だ。
 ただ時々、彼は遠い目をする時がある。

 彼が私を通して別の人を見ているように感じて、昔の恋愛を思いだしているのかな?と私は思うのだった。
 彼が言うには、現在の王が魔法力にこだわるのは、ランスのお母さんに当たるお妃様が早くに亡くなってしまったことが原因らしい。魔法によって蘇らせるために、魔法の注がれた宝物を奉納させているらしいのだった。

「魔法で人を生き返らせることなんて、出来るものなんですか?」
「出来ないと思う。私は母の影響で少しばかりの魔法を持っているけれど、何かを再生する魔法は成功した試しがない」
「試したことがあるんですね?」

 私がそう聞いたら、ランスはハッと顔をあげて、こちらを見つめて来る。愁いを帯びた瞳を見て、あ、また昔の彼女のことを考えてるな、と私は思うのだった。やおら口を開いたランスは、
「父は現実を直視したくないだけなんだと思う。母の死に後悔があるのかもしれないね」と言ったきり、その話にはしなかった。

 
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