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名前のない関係

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 私と輝夜は戸籍上他人だが、一緒に暮らしながら子どもを育てている。

 妊娠契約はまだ続いており、この頃の輝夜は契約関係に不満を抱えているように見えるのだ。

 一緒に暮らしているし、こうして触れ合えるだけで、私は幸せなのだけれど、
「感覚に間違いがあるとは、思えない。どこにも異常はないはずなんだ」
 と輝夜は不満を告げてくる。

 私が授からないことに輝夜は違和感があるらしい。
 輝夜は日に日にじりじりと焦りを滲ませるのだった。

 玉石混交のジンクスや噂を片っ端から試そうとする彼の姿には、そこはかとなく狂気を感じる。

 その日は、イソフラボンやカリウムの摂取を強く勧めてくるのだ。豆乳を飲んだ方がいい、カボチャやゴボウがいいらしい。といって彼自ら忙しい中で料理を作ってくれる。

 ありがたい反面、私には罪悪感があった。

 輝夜との契約は続いていたし、妊娠しない以上、給与が支払われている。さらに、輝夜は進学した妹達への支援をしてくれているけれども、私自身は罪悪感が募るばかりだ。

 寝室に向かえば、輝夜はサプリメントを手渡してきて、
「研究所の職員からすすめられた、事前に飲むのがいいと聞いた」
 と言ってくる。
 妊活界隈では有名なサプリメントのようだ。

 ただ、常に事実関係に忠実である輝夜が選ぶようなサプリメントではない。現状では妊娠率があがったという研究結果はどの文献にも出ていないのだから。あくまでもプラシーボ効果があるかどうか程度だと思うのだ。

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