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彼しかいらない

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「三クールで、もしダメだったら」
 輝夜は首をふった。
「それは絶対にない」
「根拠は?」
「動物的本能で分かるんだよ」
「根拠は、ないじゃない」
「そんなものだよ、こと自分のことに関しては」

 キスに次ぐキス。背中をカウンターに預けながら、下腿部を繋げて離してを繰り返しながら、高まりを目指す。
 終わってしまうのがもったいないと思う。注ぎ込まれる感覚があって、内部が収縮し吸い込んでいく感覚があった。

「輝夜、いっぱいして」
 背中にきつく手を回せば、
「当たり前だろ、まだまだ足りない」
 抱きかかえられて、寝室に運ばれた。

 ベッドに寝かされたら、私の上に覆いかぶさるようにやって来た輝夜が乳房を吸ってくる。胸の先に吸いついたままに輝夜が指を入れて来れば、
「ぁあっ」
 甘い声が出た。

「自覚あるのか?吸いこむように絞めつけてきている」
「そこ、触るからっ」

 胸の先の刺激に呼応するように、内部が蠕動運動するのだ。
 妊娠しなかったら?また輝夜は別の人と結婚するだろうし、私は夏嶺と結婚するのかもしれない。

「今回のクールで無理なら、タイミングと体外受精を検討する。絶対に孕ませる」
「はらまっ?言い方が……」
「夏嶺さんにはやらないよ」

 抜き去った指先を舐めとる輝夜の表情があまりにも淫靡なので、恥ずかしくなってきた。目元に落ちる睫毛の奥の潤んだ瞳を見て、輝夜が欲情しているのを知る。

「環が好きだよ。初めて出会ったときから、環と結ばれることしか考えてこなかった」
「とても慎重だったけど。好きだなんて、知らなかった」

「お互い様だろ」
「だって。落ちたら、おしまいだもん」
「ああ、戻れない」

 もう戻れない。例えば、妊娠できなくても、他の人と結婚しても。きっと、輝夜だけを思い続けるに違いない。

 その夜は体勢を変えて、何度も中に注ぎ込まれる。時間も気にせずに、うわ言のように名前を呼び合って、折り重なって眠った。

 最後は妊娠するかどうかなんて、どうでもよくなっている。ただ、輝夜とずっとくっついていたい、と私は思っていた。
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