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彼女しかいらない

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 春黎環。幼い頃からこの子しかいない、と直感が告げていた。
 目を引かれて視線で追えば、目が合う。母親同士が家の行き来をしていたときから、ずっと、輝夜にとっての女性はその子だけだ。

 彼女を抱き寄せれば吸いつくような感覚に襲われ、下着を外せばそのヴァギナの香りに雄としての感性がすべて開かれる。

 そんな感覚の動きを経験したことがなかった輝夜には、大きな驚きだった。自分は生物として不能かと思っていたけれど、そうじゃなかったのだ、と知る。けれど、そうして身体を重ねる関係に至るまでには、十年以上の歳月を必要としていた。

 互いに警戒していたからだ。一度重ねたら、もう二度と他の相手を味わおうとは思わない。
 この子に落ちたらもう戻れない、と本能が知っていた。

 環と付き合っていた期間は短く、恋人同士の営みがあった期間はもっと短い。何度もデートを重ねた末に初めて関係を持った。

 時代錯誤だと言われても、大切に関係を育てたいと思っていたのだ。
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