妊娠しません！

嘘ばかりでも落ちていくだけ

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　この人だ、この人に会うために私は生まれてきたんだ、と思った経験がある。
　母親に連れられて輝夜の家に行ったときだ。出迎えてくれた煌さんの後ろにいた、彼の静かな眼差しを覚えている。

　鼻の先からすんと、いい香りが入って来た気がして、いとけない彼を見つめた。笑いかけたら、相手もはにかんだ笑いを浮かべる。
　最初で最後の一目ぼれだ。

　その時から二十年経っても、他に一目ぼれの経験はない。

　結婚生活ならば、慣れることも必要なのかもしれない。のぼせあがった一目ぼれは、生活の中で冷めるだけなのだろうから。

　期限を決めて同棲した後で、入籍したらいい。
　私の生活は大きくは変わらないだろう。心乱されることもない。