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いやな来訪者
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彼女がカバンを開けて、黒と白の写真ようなものを取りだして来た。
黒い写真には白い縁取りのある人のような形のものが写っている。もう一枚取り出したのは、肌色のカラー写真にも見えるもので、ハッキリと目鼻が写っている写真だ。
私は息苦しくなり、息を大きく吸い込む。
「ほら、エコー写真と4D写真。もう少しで安定期に入る。ちゃんと着床して育つまでは、話すのをやめておいたの。検査薬で陽性が出たくらいじゃ、まだどうなるか、分からないでしょ」
私のささやかな希望を打ち砕く言葉だった。陽性反応は出た程度じゃその後にどうなるか、分からない。その通りなのだ。
離婚した夫婦に子どもができていた場合、何か月以内なら、前の夫の子どもになるのだろう。法律上のことも、戸籍上のことも私には分からない。
結婚したこともなければ、子どもを「しっかりと」宿したこともないのだから。
なおも、話を続ける彼女の言葉を遮るように、椅子を立つ。リビングを抜けて、玄関に向かったところで、追って来た輝夜から名前を呼ばれた。
その後、私の耳元に囁いた言葉は、呪いの言葉だと、その時の私は思う。
私は振り返ることなく輝夜の家を去って行く。
黒い写真には白い縁取りのある人のような形のものが写っている。もう一枚取り出したのは、肌色のカラー写真にも見えるもので、ハッキリと目鼻が写っている写真だ。
私は息苦しくなり、息を大きく吸い込む。
「ほら、エコー写真と4D写真。もう少しで安定期に入る。ちゃんと着床して育つまでは、話すのをやめておいたの。検査薬で陽性が出たくらいじゃ、まだどうなるか、分からないでしょ」
私のささやかな希望を打ち砕く言葉だった。陽性反応は出た程度じゃその後にどうなるか、分からない。その通りなのだ。
離婚した夫婦に子どもができていた場合、何か月以内なら、前の夫の子どもになるのだろう。法律上のことも、戸籍上のことも私には分からない。
結婚したこともなければ、子どもを「しっかりと」宿したこともないのだから。
なおも、話を続ける彼女の言葉を遮るように、椅子を立つ。リビングを抜けて、玄関に向かったところで、追って来た輝夜から名前を呼ばれた。
その後、私の耳元に囁いた言葉は、呪いの言葉だと、その時の私は思う。
私は振り返ることなく輝夜の家を去って行く。
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