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かつて、欲しかったもの

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「もっと頼って欲しい」
 と言われたのは、輝夜との歴史の中では遥か昔だ。

 幼い頃の頼って欲しい、の意味は係の仕事で荷物を多めに持つとか、プリントを配る量とかその程度のことだった。
 輝夜は大学付属の幼稚舎から公立小学校に入学しており、その頃に私達は同じ学校に通っていたのだ。
 幼なじみではあるけれども、事業に失敗して没落した一家である我が家と、研究所を抱える創業者一族の輝夜の家とでは顕著な格差があった。

 劣等感はない。
 ただ、羨望の眼差しを受ける輝夜を、私自身も眩しく思いながら見つめていたのだ。

 もっと頼って欲しい。
 妹達のことも協力する、と付き合っていた頃の輝夜は言った。

 父親が急逝し、母親が病気になった今の我が家の稼ぎ頭は私だ。
 頼るという考えは私の中にはなかった。

 
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