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初恋の元カレ
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輝夜とは幼なじみだ。
父親同士が同窓の研究室を出ていて、母親同士もまた幼なじみだった。初めて異性として意識したのが彼だったけれども、同じ高校に入り耳目を集める存在になっていた彼を遠巻きに見つめる。
幼なじみであるとか、幼少から仲が良いとかはもはや意味はなく、単なる知り合いになり果てたと感じていた。一時輝夜が海外留学をしていて、会う機会が減っていたのも一因だと思う。
高校一年の時に私はクラス委員長になり、隣のクラスに声をかけに行く。それが彼、秋彌輝夜だった。
「声かけられなかったら、こっちからかけてた。久しぶり」と輝夜は言う。
その後、少し昔話をした。
「環は、オレのことをすっかり忘れたと思ってた」と言うのだ。
「それはこっちこそ。イメージ変わったね」
彼は大人っぽく落ち着いた雰囲気で、丁寧に言葉を選んで話す。
昔はもう少し活発な印象だった記憶があった。
「いや、中身は全然変わってない。裏表を使い分ける技を覚えただけだよ」
と静かに笑う。
私達の話の中心は、父親達の遺伝子工学の研究だ。当時父親達は、子どもを持つ際に、遺伝的な病気を発症しにくい組み合わせや、人間世界で生きやすい遺伝子を強化する組み合わせを研究していた。
「遺伝子工学的な目線もあるけど、本能的な嗅覚っていうのもあると思う」と輝夜は言う。
「本能的な嗅覚?」
「そう、オレと環とは相性がいいと思う。昔からそう思ってた」
恥ずかしげもなく、好意的な言葉を投げ込むあたりに、輝夜の余裕を感じさせる。
「そういえば、私の初恋は輝夜だったんだよね」
私も一応同じレベルの言葉を返さなければ!と思って言ってみたら、え、と輝夜が目を丸くする。
「自分あての初恋を過去形にされるのは、なんだか悔しいかもしれないな」
「そんなそんな。モテてきたでしょ?」
と私は茶化してしまって、
「これからよろしく、秋彌委員長」
と改めて挨拶した。
再会してから親しくなるまで時間はかからなかったけれど、進展という進展はしなかった。
私達は慎重派だったからだ。
父親同士が同窓の研究室を出ていて、母親同士もまた幼なじみだった。初めて異性として意識したのが彼だったけれども、同じ高校に入り耳目を集める存在になっていた彼を遠巻きに見つめる。
幼なじみであるとか、幼少から仲が良いとかはもはや意味はなく、単なる知り合いになり果てたと感じていた。一時輝夜が海外留学をしていて、会う機会が減っていたのも一因だと思う。
高校一年の時に私はクラス委員長になり、隣のクラスに声をかけに行く。それが彼、秋彌輝夜だった。
「声かけられなかったら、こっちからかけてた。久しぶり」と輝夜は言う。
その後、少し昔話をした。
「環は、オレのことをすっかり忘れたと思ってた」と言うのだ。
「それはこっちこそ。イメージ変わったね」
彼は大人っぽく落ち着いた雰囲気で、丁寧に言葉を選んで話す。
昔はもう少し活発な印象だった記憶があった。
「いや、中身は全然変わってない。裏表を使い分ける技を覚えただけだよ」
と静かに笑う。
私達の話の中心は、父親達の遺伝子工学の研究だ。当時父親達は、子どもを持つ際に、遺伝的な病気を発症しにくい組み合わせや、人間世界で生きやすい遺伝子を強化する組み合わせを研究していた。
「遺伝子工学的な目線もあるけど、本能的な嗅覚っていうのもあると思う」と輝夜は言う。
「本能的な嗅覚?」
「そう、オレと環とは相性がいいと思う。昔からそう思ってた」
恥ずかしげもなく、好意的な言葉を投げ込むあたりに、輝夜の余裕を感じさせる。
「そういえば、私の初恋は輝夜だったんだよね」
私も一応同じレベルの言葉を返さなければ!と思って言ってみたら、え、と輝夜が目を丸くする。
「自分あての初恋を過去形にされるのは、なんだか悔しいかもしれないな」
「そんなそんな。モテてきたでしょ?」
と私は茶化してしまって、
「これからよろしく、秋彌委員長」
と改めて挨拶した。
再会してから親しくなるまで時間はかからなかったけれど、進展という進展はしなかった。
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